icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査45巻1号

2001年01月発行

文献概要

今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・13

蟯虫

著者: 藤田紘一郎1

所属機関: 1東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学

ページ範囲:P.4 - P.5

文献購入ページに移動
 蟯虫Enterobius vermicularisは全世界のほとんどの地域に蔓延している.日本では1961年の29.3%から10年後には9.77%と急激に減少したが,その後の減少は緩やかで現在でも5%前後の感染率を示している.
 雌成虫は8~13mmで(図1,2),尾端部がピン状にとがっているのでpin wormと呼ばれている.ヒトの盲腸や大腸上部に寄生し,交尾後,雌の子宮内に虫卵が充満すると(図3),夜間,肛門括約筋が弛緩したときに大腸を下り,肛門に這い出してくる.そして,ピン状の尾端部を支えにして激しく動きながら子宮内のすべての虫卵を肛門周囲に産卵する.雌1匹は1時間かけて約1万個の虫卵を産卵する.虫卵は45~50×25~30μmで厚い卵殻を持ち柿の種に似た不正楕円形をしている.虫卵は5~6時間後には成熟して幼虫包蔵卵となり感染可能となる(図4).ヒトは,この成熟虫卵を手指に付着したり,室内の塵埃とともに経口,吸入摂取して感染する.雄成虫は交尾後,雌成虫は産卵後に死滅する.ヒト体内での蟯虫の成育は非常に早く,虫卵摂取2~3週間後には盲腸部分に達して成虫になり,7~8週後に産卵する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?