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シリーズ最新医学講座―免疫機能検査・1
高齢者の免疫機能
著者: 渡部久実1 宮路智香子1 安保徹1
所属機関: 1新潟大学医学部医動物学教室
ページ範囲:P.81 - P.87
文献購入ページに移動21世紀の前半には,65歳以上の高齢者が総人口の25%以上を占めることが予測され,超高齢者社会が目前に迫っている.高齢者においては,結核などの再興感染症や日和見感染症などが増加していることから,その疾病像が変化していると考えられる.多くの研究者は,加齢による免疫能の低下が種々の疾患を誘発すると理解している.しかし,筆者らが高齢者の免疫機能を解析したところ,このような理解は免疫系の一面だけであり,別の面から見ると高齢者ではむしろ免疫力が亢進しているといってもよいことが明らかになった.すなわち,高齢者の免疫システムは若年・中年者と異なり,進化レベルの高い外来抗原向けの免疫システム(獲得免疫)から異常自己をも監視する古い免疫システム(自然免疫)への転換と考えられる.
進化レベルの高いT・B細胞はそれぞれ胸腺や骨髄でつくられ,幼児期から若年期までの免疫システムの主体を成す.しかし,加齢に伴いこれらの細胞が減少し,自然免疫の主体を成すNK細胞,NKT細胞および好中球がしだいに増加してくる.高齢者ではこれらの細胞が生体防御の主体を担うことから,免疫システムの機能的変換が起きていると考えることが,高齢者の免疫機能を理解するためには必要なことと思われる.
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