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特集 超音波検査の技術と臨床 Ⅱ.総合
3.超音波による乳癌腋窩リンパ節転移診断
著者: 加藤保之1 小川佳成2 池田克実2 鄭聖華2 高島勉2 小野田尚佳1 石川哲郎2 平川弘聖2
所属機関: 1大阪市立大学大学院医学研究科老年腫瘍病態学 2大阪市立大学大学院医学研究科腫瘍外科(第1外科)
ページ範囲:P.1265 - P.1268
文献購入ページに移動近年,乳癌の外科治療は大きな変遷を遂げている.19世紀末に乳癌根治術として確立されたHalsted手術,すなわち乳房を胸筋,腋窩リンパ節とともに一塊として切除する術式から,Patey手術,Auchincloss手術などの胸筋温存手術,さらに乳房温存手術へと乳腺の切除範囲が縮小してきている.この流れの背景として乳癌の生物学的特性研究の進歩とQuality of life (QOL)の概念ならびにインフォームド・コンセントの普及によりいずれの治療法を選択するかの決定法が変わってきたことなどがある.また,NSABP-B 04 trial1)では腋窩リンパ節郭清による延命効果はみられておらず,腋窩郭清の意義は病期診断と局所制御にあると考えられている.現在,センチネルリンパ節生検などを拠り所として,転移のない症例には腋窩リンパ節郭清を省略する研究が進められているところである.
触診における腋窩リンパ節転移診断としてFisherら2)は正診率66.5%,感度72.5%と報告している.触診においては触知困難な領域が存在することや診断医の熟練を要することもあり,客観性に乏しい.このような現状から,術前に正確なリンパ節転移診断(lymphatic mapping)を得るために画像診断,特に侵襲が少なく,診断能の高い超音波診断が期待されるところとなってきた.
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