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文献詳細

雑誌文献

臨床検査45巻12号

2001年11月発行

文献概要

トピックス

循環浴槽とレジオネラ症

著者: 藪内英子1

所属機関: 1愛知医科大学微生物・免疫学講座

ページ範囲:P.1605 - P.1607

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1.はじめに
 浴槽の湯を循環再利用する装置は,家庭・民宿・旅館・公衆浴場・温泉浴場など多くの場所で用いられている.その目的は主として水道経費の節減,温泉資源の保全である.温泉浴場で循環装置を用いず常時換水・清掃しているのは,よほど湧出泉量が多く湯温の高いところに限られている.他方,大浴槽を備えた施設では,頻回の排水による下水設備の負担,浴槽の清掃と湯の再補給に時間がかかることも問題であった.これら公共施設のほかに,かつて全盛を誇った家庭用24時間風呂のように風呂を洗わなくてよいという触れ込みもあった.
 閉鎖空間内を循環する水は滞留水と同じと考えられる.停滞する水の中では微生物が増殖する.増殖した微生物が細菌の場合,1ml当たりの菌数が107CFUに達しなければ,われわれの肉眼では濁りとして認められないことは一般の人には認識されていなかった.浴槽水は,入浴者の体表からの有機物や塩類が,剥落した微生物の栄養源となる.濾過装置に定着・増殖した微生物が浴槽水の有機物を分解し湯を清浄にするというのが生物浄化方式の濾過器,いわゆる24時間風呂である.栄養豊富な人工液体培地では107~9CFUまで増殖しうる菌種でも,浴槽水のように低栄養の環境では最大限104CFU/mlまでしか増殖しない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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