今月の主題 薬剤耐性菌をめぐる最近の話題
いま話題の耐性菌
メタロ-β-ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌
著者:
柴田尚宏1
土井洋平1
荒川宜親1
所属機関:
1国立感染症研究所細菌・血液製剤部
ページ範囲:P.840 - P.850
文献購入ページに移動
メタロ-β-ラクタマーゼ(metallo-β-lactamase)は,その活性中心に亜鉛をもつβ-ラクタマーゼで,ペニシリン系,セフェム系抗生物質を分解するだけでなく,クラブラン酸,スルバクタムなどのβ-ラクタマーゼ阻害剤,さらに各種のβ-ラクタマーゼに安定とされるカルバペネムをも分解してしまう酵素である.そうした酵素を産生する耐性菌が,わが国における臓器移植,免疫療法,癌治療などの高度医療の発展に伴い,グラム陰性桿菌感染症で問題になりつつあり,さらにそれらが高度耐性を獲得するような場合,臨床的に非常に問題となると考えられる.しかし現状では,従来のディスク拡散法,微量希釈法により,第三世代セフェム薬,セファマイシン系薬に耐性を示す菌が,メタロ-β-ラクタマーゼを産生する株なのかあるいはESBLや基質拡張型のAmpC型β-ラクタマーゼを産生する株なのか区別することは難しい.そこでわれわれの開発した2-メルカプトプロピオン酸(2-MPA)やメルカプト酢酸ナトリウム(SMA)を用いたメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌の検出法は安価で簡便であり,臨床現場での耐性菌の早期発見,院内感染対策にも役立つと期待できる.