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文献詳細

雑誌文献

臨床検査46巻11号

2002年10月発行

文献概要

特集 造血器腫瘍 ひとくちメモ

ヒ素化合物(亜ヒ酸)

著者: 加藤淳1

所属機関: 1順天堂大学医学部血液内科

ページ範囲:P.1490 - P.1491

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 これまでヒ素化合物は毒物であり,かつ強力な発癌物質であるとみなされてきたが,実際には人類が数千年にわたり薬として用いてきた古い歴史がある.現代の西洋医学では中枢神経症状を伴ったTrypanosoma症に使用されるのにすぎないが,漢方では歯髄疾患,乾癬,梅毒,リウマチ性疾患,また西洋医学でも梅毒や慢性骨髄性白血病の治療薬として用いられてきた.この古い毒薬物(?)が新たに脚光を浴びたのは,急性前骨髄球性白血病(APL,AML:M3)に対する有効性を報告したSunらによる衝撃的な論文(1992年)がきっかけであった.彼らがその有効性を発見するに至った経緯は極めて興味深いので以下簡単に紹介したい.漢方と西洋医学の統合をめざしていたハルビン医科大学の医師グループが,地方で行われていた漢方による癌の治療法を調査研究していたところ,1970年に皮膚癌に有効と思われる治療法を知るに至った.分析の結果,薬剤の有効成分がヒ石粉(arsenic stone powder)であることが判明した.しかし,その有効成分である亜ヒ酸(As2O3)を経口投与したところ,重篤な消化器症状や肝障害をきたすことがわかったため,さらに精製して静注してみると著しく副作用が軽減した.そこで1971年以降様々な癌に対する膨大な臨床治験を行った結果,亜ヒ酸はごく限られた癌に有効であることがわかったが,とりわけAPLに対する効果がきわだっていた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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