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今月の主題 生体材料の取扱いと倫理 各論
4. 胎児・羊水
著者: 鈴森薫1
所属機関: 1名古屋市立大学大学院医学研究科生態情報・機能制御医学専攻・生殖・遺伝医学
ページ範囲:P.1519 - P.1523
文献購入ページに移動〔SUMMARY〕 胎児・羊水は胎児遺伝情報のための貴重な生体材料である.子宮内胎児自身から安全に生体材料を採取することは実際的ではなく(胎児皮膚生検による先天性皮膚疾患の出生前診断以外は行われていない),もっぱら流産胎児の原因検索のための染色体分析に限定される.流産胎児の約50%に致死的な染色体異常がみつかるが,染色体異常でない胎児については今後片親性ダイソミー,とかメチレーションの異常など遺伝子レベルによる原因検索も必要となろう.胎児には自然に流産したものと母体保護法に基づいて行われる人工妊娠中絶がある.人工妊娠中絶胎児の多くは遺伝的に正常であり,ヒト胎児由来材料に依存した医学生物学的研究,再生医療にとって有効な資源となりうるものであり,倫理的ガイドラインを加えた利用指針が策定されるのを期待している.羊水のほとんどは出生前診断,特に胎児染色体分析に利用されているのが現状である.〔臨床検査 47:1519-1523,2003〕
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