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シリーズ最新医学講座・Ⅱ シグナル伝達・5
異常蛋白質ストレス(特に小胞体ストレス)シグナル伝達
著者: 北嶋繁孝1 川内潤也1 巴銀花1
所属機関: 1東京医科歯科大学難治疾患研究所疾患医科学研究系遺伝生化学分野
ページ範囲:P.535 - P.544
文献購入ページに移動生命の設計図はゲノムの一次構造にコードされているが,その遺伝情報は,蛋白質に翻訳されることで発現される.すなわち,ゲノム情報の最終的な機能実行分子は蛋白質である.DNAが4種類の塩基で構成されるのに対し,蛋白質はそれよりはるかに多い20種類のアミノ酸で構成される.この結果,例えば5塩基からなるDNA配列には,4の5乗 (1,024) 通りの組み合わせがあるのに対して,5アミノ酸からなる蛋白質(ペプチド)では,20の5乗 (32×105) 通りという多様な組み合わせが可能である.この一次配列の多様性が,蛋白質が特異的な生物機能を果たす条件の1つであるが,それだけでは不十分である.すなわち,完成された蛋白質は,正しく折り畳まれた立体構造をとる必要があり,この正確な高次構造が蛋白質の生物機能には不可欠である.これまでに,アミノ酸変異による異常蛋白質の疾患は数多く報告されてきたが,その解析は,主にアミノ酸変異による機能の変化という点から解析されてきたといえる.これに対して,CAGリピート病などでは,正常な蛋白質の折り畳み(フォールディング)障害が病態と深くかかわることが明らかにされ,コンフォメーション病という概念で論じられるようになってきた.すなわち,構造(コンフォメーション)の異常によって溶解度の変化をきたした異常蛋白質が細胞内に蓄積するというものである.このように,蛋白質合成が行われる小胞体は,蛋白質の品質管理を担う場ともなっており,これら異常蛋白質の蓄積は小胞体ストレスとして作用する.さらに,小胞体ストレスが,一連の生体防御機構を活性化するとともに過剰なストレスに対しては細胞死シグナルを惹起し,数々の疾患の病態発現に関与していることも知られてきた.ここでは,蛋白質生合成の場である小胞体に焦点を当て,その蛋白質品質管理機構の仕組みと小胞体ストレスが関与する疾患について概説する.
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