文献詳細
文献概要
シリーズ最新医学講座・Ⅱ シグナル伝達・7
細胞骨格・細胞接着の制御シグナル
著者: 渡辺崇1 貝淵弘三1
所属機関: 1名古屋大学大学院医学系研究科細胞情報薬理学講座
ページ範囲:P.805 - P.812
文献購入ページに移動はじめに
癌はわが国の死因の第一位を占めている.癌の転移とは癌細胞が原発巣を離れて,近接組織あるいは遠隔臓器で増殖することをいう.癌細胞は原発巣からの遊離にはじまり,組織内での浸潤,リンパ管や血管内への侵入,さらに管壁から組織への浸潤といった過程を経て新しい環境で再増殖する.この過程には細胞の移動が不可欠であり接着能,運動能の異常が癌の転移に深く関与している.細胞接着や細胞運動は細胞内の細胞骨格により調節されている.細胞骨格にはアクチンなどからなるマイクロフィラメント,チューブリンなどからなる微小管,ビメンチン,ケラチンなどからなる中間径フィラメントがある.これらは互いに密接に関係しながら,細胞接着,細胞運動,細胞質分裂,細胞形態,細胞の極性形成などの高次機能を担っている.低分子量GTP結合蛋白質のサブファミリーの1つであるRhoファミリーは,Rho,Rac,Cdc42などのメンバーから構成されており,細胞増殖因子などの細胞外シグナルの下流で細胞骨格を制御していると考えられている.近年,Rhoファミリーのそれぞれのメンバーに特異的な標的蛋白質が次々と同定され,Rhoファミリーの作用機構が明らかになりつつある.本稿ではRhoファミリーによる細胞骨格,細胞接着の制御機構について,われわれの研究をまじえて概説する.
癌はわが国の死因の第一位を占めている.癌の転移とは癌細胞が原発巣を離れて,近接組織あるいは遠隔臓器で増殖することをいう.癌細胞は原発巣からの遊離にはじまり,組織内での浸潤,リンパ管や血管内への侵入,さらに管壁から組織への浸潤といった過程を経て新しい環境で再増殖する.この過程には細胞の移動が不可欠であり接着能,運動能の異常が癌の転移に深く関与している.細胞接着や細胞運動は細胞内の細胞骨格により調節されている.細胞骨格にはアクチンなどからなるマイクロフィラメント,チューブリンなどからなる微小管,ビメンチン,ケラチンなどからなる中間径フィラメントがある.これらは互いに密接に関係しながら,細胞接着,細胞運動,細胞質分裂,細胞形態,細胞の極性形成などの高次機能を担っている.低分子量GTP結合蛋白質のサブファミリーの1つであるRhoファミリーは,Rho,Rac,Cdc42などのメンバーから構成されており,細胞増殖因子などの細胞外シグナルの下流で細胞骨格を制御していると考えられている.近年,Rhoファミリーのそれぞれのメンバーに特異的な標的蛋白質が次々と同定され,Rhoファミリーの作用機構が明らかになりつつある.本稿ではRhoファミリーによる細胞骨格,細胞接着の制御機構について,われわれの研究をまじえて概説する.
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