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文献詳細

雑誌文献

臨床検査47巻9号

2003年09月発行

文献概要

シリーズ最新医学講座・Ⅱ シグナル伝達・9

老化のシグナル

著者: 大久保研之1

所属機関: 1東京女子医科大学医学部生化学

ページ範囲:P.1031 - P.1037

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はじめに

 環境の整備や生活水準の向上によって日本人の平均余命は延び続け「人生80年以上」というレベルに達した.2003年2月末Science誌が組んだ老化の特集記事には,三大死因疾患が征圧されて延びる寿命は10年程度であるが,老化を遅らせることができれば寿命は20~30年延びるだろうとの予測がある1)

 医学において老化(senescence)は「生体が成熟して以降,集団のすべての構成員におこる進行性の生体機能の衰え」であると定義され,年齢とともにホメオスタシス維持能力やストレス抵抗性が低下することを老化現象であると捉えている.これに対し加齢(aging)とは,「誕生から死までの時間経過(とその間に起こる変化)」を指し,その生存した期間そのものを寿命(life-span)といっている.多くの動物では加齢の間に(同時に)老化が進行している.

 現在までに老化に関与するといわれているものは,細胞周期,増殖因子,染色体構造,テロメア,活性酸素,ミトコンドリアなど様々な領域に及ぶ.このうちテロメアや活性酸素,ミトコンドリアに関しては,非常に多くの総説があるのでそちらを参照していただくことにし,ここではこの数年で細胞周期制御,インスリン様シグナル,代謝経路とクロマチン構造,の3分野に新しい知見が集積されてきたのでこれらを中心に解説する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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