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文献詳細

雑誌文献

臨床検査48巻12号

2004年11月発行

文献概要

今月の主題 自己健康管理のための検査 話題

尿検査トイレの開発

著者: 永田英樹1 兼国伸彦1 山﨑洋式1 吉積宏治2

所属機関: 1東陶機器株式会社総合研究所健康商品事業開発部 2産業医科大学産業生態科学研究所作業病態学研究室

ページ範囲:P.1540 - P.1548

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 1.はじめに

 わが国では急速な高齢化社会の到来とともに,食事の欧米化,また交通機関の発達による徒歩の機会の僅少化がすすみ,過食や運動不足などの生活環境の変化が一因となって,生活習慣病が急激に拡大してきたことは周知の事実である.厚生労働省の統計1)によれば,生活習慣病の代表格である高血圧症の入通院患者は699万人,糖尿病は228万人といわれている.また,2002年の厚生労働省による糖尿病実態調査2)によれば,糖尿病が強く疑われる人は740万人,糖尿病の可能性を否定できない人は880万人にのぼり,生活習慣病全体を考えると,中高年以上では2割以上の人が生活習慣病の患者またはその予備軍と考えられる.

 生活習慣病が国民病といわれるような状況にあって,旧厚生省は2001年に21世紀の国民健康づくり運動「健康日本21」をスタートさせ,国民の生活習慣病に対する予防意識の向上を呼びかけている.この「健康日本21」の効果もあってか,今年の8月に社団法人日本病院会が発表した全国886施設を対象に行った人間ドック受診者数調査の結果3)では,高血圧症,高脂血症,肥満などの生活習慣病に関連する異常所見者数が,この十年間で初めて減少に転じた.国民の生活習慣病に対する予防意識が向上している証であれば,大変喜ばしいことである.

 TOTOでは,糖尿病が国民に広がっている状況に鑑み,「健康日本21」を支援する製品として,トイレの便器に後付けし,尿糖値が簡単に自己測定できる在宅用尿糖検査機を開発し,1999年9月に発売した.この製品は,主として糖尿病境界型(予備軍)の患者を対象にし,在宅または職場での活用を意図した糖尿病予防支援機器である.さらにTOTOでは,高血圧症またはその予備軍の患者が,在宅での食事療法に活用できる尿塩分検査機の開発を進めている.この装置は,尿への塩分排泄量をトイレで簡単に測定可能とするもので,日本人にありがちである過剰な食塩摂取量を低減させることに貢献できると考えている.本稿では,これらTOTOで開発した,または開発中であるトイレ設置の尿検査機について紹介したい.

 一方,TOTOが保有するトイレ周りの技術を集結し,医療施設の入院または通院患者の尿流率をトイレで簡単に測定できる技術や,蓄尿を改善するトイレも開発中であり,話題提供として,これについても簡単に触れたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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