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シリーズ最新医学講座・Ⅱ 病理診断に役立つ分子病理学・3
炎症性腸疾患
著者: 喜多嶋和晃1 藤井茂彦1 藤盛孝博1
所属機関: 1獨協医科大学病理学(人体分子)
ページ範囲:P.327 - P.334
文献購入ページに移動分子病理学的手法を用いた診断技術は医療の様々な分野に応用されつつある.分子病理学的診断のうち中心となるのは,遺伝子増幅法を中心とする遺伝子診断であり,遺伝子情報の蓄積と相まって飛躍的に発展している.炎症性腸疾患には原因不明なものや組織学的に非特異的炎症像を示す例があり,病理形態診断に加えて分子病理学的診断を用いて確定診断にいたる症例も多い.また,内視鏡検査の普及により,検体が容易に採取可能であることからも,遺伝子診断が応用される要因にもなっている.
今回は,炎症性腸疾患の病理診断に応用される分子病理学的手法を解説するとともに,実際の応用例を紹介する.
炎症性腸疾患の概念
広義の炎症性腸疾患には,感染性,虚血性,薬剤性,放射線性など,炎症の原因・誘因ないし機序がある程度判明しうる疾患と,潰瘍性大腸炎やCrohn病のように原因不明の疾患が含まれる.潰瘍性大腸炎とCrohn病は,病因はいまだに不明であるが,これらは一定の臨床病理学的特徴を有し,1つの疾患単位を形成しており,これらの2つを特に独立した疾患概念としてとらえて非特異的炎症性腸疾患と呼び,狭義の炎症性腸疾患はこの2つを指すことが多い.
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