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脳囊虫症(ニューロシスチセルコーシス)の世界における流行の現状と画像,免疫,遺伝子診断法の有用性と限界
著者: 伊藤亮1 迫康仁1 中尾稔1 山﨑浩1 中谷和宏2 石川裕司1
所属機関: 1旭川医科大学寄生虫学講座 2旭川医科大学医学部附属動物実験施設
ページ範囲:P.335 - P.340
文献購入ページに移動脳囊虫症(ニューロシスチセルコーシス,neurocysticercosis)という疾患名は日本国内ではあまりよく知られていないが,2003年WHO総会において撲滅可能な重篤な寄生虫疾患として正式に取り上げられた国際新興・再興感染症の1つである1).アフリカ,アジア,ラテンアメリカにおける流行は深刻であり,豚肉消費を食生活の中心とする発展途上国で蔓延している難治性,致死的寄生虫疾患である.本症に関する診断法が確立されていなかった20年前にWHOは年間死亡者数5万人と推定していたこと,1990年代にアフリカにおける脳囊虫症の蔓延の実態が明らかになりはじめ,上記の2003年総会における国際協力による撲滅への取組み宣言に至っている.
アジアにおいては豚肉消費国である中国で深刻であるが2),ヒンズー教徒が人口の80%,菜食主義者が人口の60%以上を占めるインドにおける脳囊虫症の流行も深刻である3).日本国内には流行は認められないが,アジア各地,あるいはアフリカ,中南米滞在中に感染し,日本に戻ってから何らかの症状が出て脳腫瘍等と誤診される脳囊虫の症例が年間10~20例くらいであろうと推定している.今後,脳囊虫症の症例は増えることがあっても減ることはないであろうと判断している.
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