文献詳細
文献概要
今月の主題 更年期障害と甲状腺ホルモン 話題
HRTと漢方
著者: 髙松潔1 牧田和也2 田邊清男1 野澤志朗2
所属機関: 1東京歯科大学市川総合病院産婦人科 2慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
ページ範囲:P.877 - P.884
文献購入ページに移動更年期障害は中高年女性のQuality of Life(QOL)を阻害する大きな要因の1つであり,その対応は重要な問題である.2001年12月現在,更年期世代ともいえる45~59歳の日本人女性は1,401万人であり,女性の総人口の21.5%にあたる.日本人女性における更年期障害の罹患率はいまだ明らかではないが,仮に40%が何らかの治療が必要であるとして,560万人,総女性人口の約9%もが更年期障害の治療対象となると考えられる.
更年期障害の治療法にはいくつかあるが,わが国においてはホルモン補充療法(hormone replacement therapy;HRT)と漢方療法が二大治療ツールといっても過言ではない.その特徴を表11)にまとめる.これらの治療法を抜きに更年期医療を語ることは難しいことには異論はないと思われるし,実際,更年期障害を主訴に受診した患者においてこれらの治療法のどちらも受けたことのない者はいないのではないだろうか.しかし,それぞれ長所・短所をもつために,2つの治療法の使い分けに関してはコンセンサスが得られてはおらず,施設によって様々な意見があるものと思われる.さらに,2002年5月のWomen's Health Initiative(WHI)におけるエストロゲン+プロゲスチン併用投与試験の終了2),2003年8月のThe Million Women Studyの報告3),2004年3月のWHIにおけるエストロゲン単独投与試験の終了4)などHRTの副作用に関する報告の影響もあり,治療指針が揺らぎつつあるのが現状であろう.
これら2つの治療法の選択に当たっては,その基本的概念や治療のポリシーから異なっているため,同一の指標により客観的に評価してその特徴を明らかにすることが必要となる.HRTは一般に更年期障害への効果が高いといわれている.しかし,更年期障害とは「更年期に現れる多種多様の症候群で,器質的変化に相応しない自律神経失調症を中心とした不定愁訴を主訴とする症候群」と定義されているとおり5),複数の愁訴の集合体であり,愁訴によって治療効果に差異があること,つまり治療効果にスペクトルが存在し,これが漢方療法のそれとは異なることが考えられる.一方,漢方療法も古くから更年期障害治療において頻用されており,その効果に対しては定評がある.そこでわれわれは,HRTと漢方療法のそれぞれの効果の特徴を明らかにし,更年期障害に対する治療法選択の一助とするために,同一の指標を用いて,両治療法の効果について比較検討した.
掲載誌情報