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文献詳細

雑誌文献

臨床検査48巻8号

2004年08月発行

文献概要

シリーズ最新医学講座・Ⅱ 病理診断に役立つ分子病理学・8

膵臓癌

著者: 堀井明1

所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座分子病理学分野

ページ範囲:P.908 - P.914

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はじめに

 膵臓にできる癌の発生母地は,膵管,腺房,ランゲルハンス島などがあるが,これらのなかで膵管由来のものが大多数を占める.そのため,通常「膵癌」という場合,膵管由来の癌を指すことが多い.本稿では,膵管癌を中心に述べる.また,本稿では,「遺伝子」を軸にして概説する.

 厚生労働省の統計1)によると,2002年にわが国では982,371人(10万人当たり779.6人)が死亡したと推計されているが,このうち癌死は第1位で304,286人(10万人当たり241.5人)であった.死因の31.0%を占めている.膵癌は癌死の第5位であった.1999年の大阪府立成人病センターの地域癌登録を元にした統計2)では,1,235人が膵癌に罹患し,1,193人が死亡した.人口10万人あたりでは罹患率は14.0,死亡率は13.6である.死亡率を罹患率で割ると97%,裏返して考えると,たったの3%の人しか助かっていない勘定になっている.2003年に発表された膵臓学会の統計3)によると,膵癌の5年生存率は全体で4.9%,切除例では13.5%に対しそれ以外では0.6%,stage Iの5年生存率が58.6%であったのに対しstage IVbでは2.8%であった.ちなみに癌患者全体では32%が5年生存している.膵癌はすべての癌のなかで最も治療成績が悪く,膵癌は数のうえでこそ癌死の第5位であるが,助からない癌であるという観点では第1位であり,膵癌患者に対し切除可能な時期に診断して手術することが現時点では最善の方策であることを示している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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