文献詳細
文献概要
今月の表紙 臨床生理検査・画像検査・8
消化管疾患
著者: 藤井康友1
所属機関: 1自治医科大学臨床検査医学
ページ範囲:P.830 - P.831
文献購入ページに移動 近年の超音波機器の進歩により,病的に肥厚した消化管の詳細な評価が可能となったことから,消化管疾患の診断における体外式超音波検査の有用性が注目されている.消化管疾患の超音波診断には肝胆膵といった実質臓器とはやや異なったアプローチが必要である.まず,消化管は実質臓器と比較して浅い部位を走行しているので,描出範囲を浅めに設定して走査するほうがよい.また,消化管ガスを丁寧に追跡し,部位の同定を行いながら走査することが重要である.
1.胃悪性リンパ腫
74歳,男性.食欲不振を主訴に来院.スクリーニング目的にて超音波検査が施行された.超音波上,胃は全周性に肥厚しており,その層構造は消失していた.肥厚した胃壁は,プローブで圧迫を加えると容易に変形した(図1).また,胃壁の内部エコーは無エコーに近い均一な低エコーであった.胃壁の全周性肥厚を呈する疾患としては,スキルス胃癌,悪性リンパ腫といった腫瘍性疾患および急性胃粘膜病変(胃アニサキス症を含む)が鑑別に挙がるが,病変の軟らかさやエコーレベルから胃悪性リンパ腫を第一に考えた.引き続き施行された内視鏡検査(図2)にて本症と確定診断された.消化管悪性リンパ腫は節外性リンパ腫のなかで最も頻度の高いもので,そのほとんどは非ホジキン腫のB細胞性である.消化管悪性リンパ腫の超音波像は,肥厚した消化管壁は均一な無エコーに近い低エコーを呈し,胃癌と比較して内腔は保たれ,軟らかい腫瘍であることが多い.これらのうち,特に「無エコーに近い均一な低エコー」像は消化管に限らず悪性リンパ腫の特徴的超音波所見であり,密な細胞浸潤という病理組織学的構築を音響インピーダンスの低下として反映しているものと考えられる.
1.胃悪性リンパ腫
74歳,男性.食欲不振を主訴に来院.スクリーニング目的にて超音波検査が施行された.超音波上,胃は全周性に肥厚しており,その層構造は消失していた.肥厚した胃壁は,プローブで圧迫を加えると容易に変形した(図1).また,胃壁の内部エコーは無エコーに近い均一な低エコーであった.胃壁の全周性肥厚を呈する疾患としては,スキルス胃癌,悪性リンパ腫といった腫瘍性疾患および急性胃粘膜病変(胃アニサキス症を含む)が鑑別に挙がるが,病変の軟らかさやエコーレベルから胃悪性リンパ腫を第一に考えた.引き続き施行された内視鏡検査(図2)にて本症と確定診断された.消化管悪性リンパ腫は節外性リンパ腫のなかで最も頻度の高いもので,そのほとんどは非ホジキン腫のB細胞性である.消化管悪性リンパ腫の超音波像は,肥厚した消化管壁は均一な無エコーに近い低エコーを呈し,胃癌と比較して内腔は保たれ,軟らかい腫瘍であることが多い.これらのうち,特に「無エコーに近い均一な低エコー」像は消化管に限らず悪性リンパ腫の特徴的超音波所見であり,密な細胞浸潤という病理組織学的構築を音響インピーダンスの低下として反映しているものと考えられる.
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