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今月の主題 海外旅行と臨床検査 総説
高度空間における放射線の人体影響
著者: 中村典1
所属機関: 1放射線影響研究所遺伝学部
ページ範囲:P.1229 - P.1231
文献購入ページに移動 海外旅行に伴う航空機の利用は,高度10,000~12,000mの空間を飛行するので,宇宙から降ってくる放射線に対して大気による遮蔽が少なくなり,地上と比べて被曝量が増加する.しかし,航空機乗務員(年間900時間程度の勤務)でも,放射線被曝量は年間1ミリシーベルト(mSv)から5mSv程度の増加と推定されており,これは地上における年間自然放射線レベル(2~3mSv)と比較して危険なレベルにあるとは考えられない.ましてや一般旅行者となれば,1回の海外旅行(往復)に伴う放射線被曝は多くても0.2mSv程度であるので,影響が検出できるとは思われない.放射線による被曝が原因で航空機乗務員に特定の病気が増えたという明確な事実もない.〔臨床検査 50:1229-1231,2006〕
参考文献
1) Pierce DA, Shimizu Y, Preston DL, et al:Studies on the mortality of atomic bomb survivors. Report 12, Part I. Cancer:1950-1990. Radiat Res 146:1-27, 1996
2) 保田浩志,藤高和信,高木俊治,他:航空機乗務員の被ばく管理に関する考察.保健物理 39:345-351, 2004
3) 日本保健物理学会:航空機搭乗者の宇宙放射線被ばくに関する専門研究会報告書,2006(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jhps/)
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