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文献詳細

雑誌文献

臨床検査50巻6号

2006年06月発行

文献概要

今月の表紙 細胞診:感染と細胞所見・6

アスペルギルス

著者: 坂本憲彦1 海野みちる2 坂本穆彦2

所属機関: 1杏林大学医学部付属病院 病院病理部 2杏林大学医学部病理学教室

ページ範囲:P.604 - P.606

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 アスペルギルス属は土壌や空中の自然環境に広く分布する代表的な糸状真菌で,約200種類の菌種が存在する.醤油・味噌・清酒などの醸造,有機酸製造や酵素の生産源などに多用されている。しかし,発癌性物質や中毒症の原因であるマイコトキシン(mycotoxin)の産生およびアスペルギルス症の起因菌にもなる.代表的な菌種はAspergillus oryzae:A. oryzae・Aspergillus niger:A. niger・Aspergillus clavatus:A. clavatus・Aspergillus fumigatus:A. fumigatus・Aspergillus flavus:A. flavus・Aspergillus nidulans:A. nidulans・Aspergillus terreus:A. terreusが知られている.

 アスペルギルス症(aspergillosis)の起因菌は,A. fumigatus・A. flavus・A. niger・A. terreusなどの数種で,A. fumigatusが大多数を占める1,2).アスペルギルス種(Aspergillus ssp.)と他の真菌との違いは,気道内に定着する能力をもつことで,肺に発症することが多く,肺アスペルギルス症(pulmonary aspergillosis)とよばれる.原因は空気中に浮遊した分生子(conidium):胞子を吸入することにより経気道感染すると考えられているが,副鼻腔・肝臓・脳・皮膚などにもみられる1)

参考文献

1) 山口英世:病原真菌と真菌症,改訂3版,南山堂,pp156-163, 2005
2) 奥平雅彦,発地雅夫:真菌症カラーアトラス,文光堂,p97, 1994
3) 大坪孝和,田代隆良:アスペルギルス症 真菌症のすべて 最新知見からの現状と展望(伊藤章編),医薬ジャーナル社,pp113-120, 1998
4) 原喜与一,吉岡高広,桂栄孝,他:気管支擦過細胞診標本中の蓚酸カルシウム結晶が真菌発見の契機となった肺アスペルギルス症の1例,日本臨床細胞学会雑誌 38:431-435, 1999
5) 荒井祐司:細胞診を学ぶ人のために 第4版(坂本穆彦編),医学書院,pp136, 170, 177-178, 2005
6) 當銘良也,三宅真司,佐野弘子:必携細胞診カラー図鑑(水口國雄監修),医歯薬出版,pp176, 231, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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