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文献詳細

雑誌文献

臨床検査51巻9号

2007年09月発行

文献概要

学会だより 第56回日本医学検査学会

南の国から暑いメッセージ

著者: 棚町啓之1

所属機関: 1九州大学病院検査部

ページ範囲:P.1016 - P.1016

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 第56回日本医学検査学会が2007年5月18日(金)・19日(土)の2日間,宮崎県宮崎市のフェニックス・シーガイア・リゾートにある宮崎国際会議場とワールドコンベンションセンターサミットで開催された.学会の楽しみの一つでもある懇親会は,世界最大規模の室内ウォーターパーク・オーシャンドームで開催され,宮崎芸能やサーフィンショーで盛り上がった.例年同様,学会前日の17日(木)には定期総会,開会式,表彰式が開催されたが,開会式の来賓には人気沸騰中の県知事,あの東国原英夫宮崎県知事からスーツ姿で祝辞をいただいた.しかし,翌朝のニュースでは,例の作業着姿の知事が「ごめんなさい会見」(県の施設で不正経理発覚)が報道されており,大変お忙しいなかの開会式ご出席だったのだろう.

 招待講演では「HTLV-1感染からATL発症予防」について,宮崎大学医学部内科学講座免疫感染病態学分野の岡山昭彦先生が講演された.その講演内容は,HAM(HTLV-1 associated myelopathy)の発症は免疫反応で周囲の神経組織に影響し発症するため免疫力が高い人や夫婦間感染で多い.抗体価が日本より高いジャマイカではHAMも日本より多いことから,HAM発症は抗体価との関連が示唆されている.抗体陽性率は40歳以上では女性のほうが高率であるが,感染細胞数は男性>女性であり変化しない.末梢血の異常リンパ球の割合を0.6%で切るとHTLV-1陰性,陽性がはっきり分かれる.細胞増殖やアポトーシスを回避させるTax蛋白が白血化の原因と考えられている.ATLの発症は,キャリアのうち1,000人/年の割合で発症しており,50歳以上に多く,男性>女性と性差がある.ATL発症の推定因子としては,①乳児期以前の感染,②ATLの家族歴,③男性,④喫煙である.母子感染は母乳を与え続けた場合2割,その期間が3か月以内であれば11%,完全人工乳の場合3%(出産時胎盤を通じて感染するため“0%”とはならない)であり,現在は母乳制限のため以前より家族内感染が低下している.女性から男性への感染よりも男性から女性への感染が多いことは知られているが,配偶者がどちらも抗体陰性である場合の抗体陽性率は,男性1.2%,女性4.0%であり,配偶者のどちらかが抗体陽性である場合は男性10.5%,女性54%である.ATL発症予防には母子感染対策が重要であり,母乳による児への感染を遮断すること,感染細胞を減少させるワクチンや抗ウイルス剤の検討,食品成分で感染細胞を“死”に誘導する研究など,HTLV感染から発症予防までを非常にわかりやすく説明していただいた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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