文献詳細
今月の主題 結核
トピックス
DOTS(Directly Observed Treatment, Short course)
著者: 成田友代1
所属機関: 1東京都福祉保健局少子社会対策部・子ども医療課
ページ範囲:P.1155 - P.1159
文献概要
DOTS(Directly Observed Treatment, Short course)とは,1995年にWHOにより提唱されたDOTS戦略のことであり,DOT(Directly Observed Treatment,直接服薬確認療法)を主軸とする包括的な結核対策のことを指す1).結核は基本的には抗結核薬を飲み続ければ治る病気であるが,服薬期間が最短でも6か月と長いこともあり,不規則治療や治療中断の防止が長年の課題であった.そこで,短期で有効な化学療法を用い患者が薬を確実に服用していることを確認しながら治療を進めるDOTが導入され,アメリカでの治療成績の飛躍的向上2),中国における大規模なDOT治療の成功3)を経て,DOTS戦略が誕生した.
WHOは喀痰塗抹陽性結核患者を重点対象とし,「発見した喀痰塗抹陽性結核患者の85%以上を治す」という目標を掲げ,このDOTS戦略に5つの基本要素4)を示した.これを日本の実情に適合させると,①行政の関与,②精度の高い診断,③標準的な治療の規則的な実施,④医療の確実な提供体制,⑤治療情報の管理と評価の5要素(日本版DOTSの5要素5))となる.ここで注意したいのは,DOTSはDOTというひとつの治療法にとどまらず,5要素が一体的に提供される総合的な結核対策であるということである.現在,DOTSは結核医療の国際基準6)にも採用され,世界的標準として世界中で展開されている.
参考文献
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