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文献詳細

雑誌文献

臨床検査52巻11号

2008年10月発行

文献概要

特集 ホルモンの病態異常と臨床検査 各論Ⅰ ホルモンの病態異常と検査 6.膵臓

2) グルカゴン

著者: 武田純1

所属機関: 1岐阜大学大学院医学系研究科内分泌代謝病態学

ページ範囲:P.1239 - P.1242

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膵内分泌細胞・小腸細胞とグルカゴン

 膵ランゲルハンス島(膵島)は膵全体の約1%を占める4種類のホルモン産生細胞から構成されており,インスリン(膵島の約70%を占めるβ細胞から分泌)とグルカゴン(膵島の約20%を占めるα細胞から分泌)は血糖の恒常性の維持に重要な働きをしている.膵ホルモンは,自身の細胞または周囲の細胞を制御しながら協調した機能ユニットを構成している(オートクリン,パラクリン).膵島を構成する内分泌細胞は膵島において均一に分布するのではなく,β細胞が中心に位置し,その周辺にα細胞などが分布する.臨床の残存β細胞機能を推定する検査であるグルカゴン負荷試験のように,グルカゴンは最も強力なインスリン分泌刺激ホルモンであり,プログルカゴンを前駆体としてプロセシングにより,グリセンチン関連膵ペプチド(glicentin-related pancreatic polypeptide;GRPP)とmajor proglucagon fragment(MPGF)であるグルカゴン様ポリペプチド(glucagon-like polypeptide;GLP-1,GLP-2)が生成される(図).一方,グルカゴン遺伝子は消化管細胞でも発現しており,エンテログルカゴン(グリセンチン,オキシントモジュリン)とGLP-1は小腸L細胞から分泌されている.組織特異的なプロセシングによる生成物の差異はプロホルモン変換酵素(prohormone converting enzyme;PC1/3,PC2)の作用の違いに基づくと考えられる.血中グルカゴンの特異的な測定にはエンテログルカゴンとの交差反応の少ないC端特異な抗体を用いる.グルカゴン自体は不安定なのでアプロチニンEDTA採血を行い,速やかに血漿を遠心分離後に冷凍保存する.

参考文献

1) Franklin I, Gromada J, Gjinovci A, et al:β-cell secretory products activate α-cell ATP-dependent potassium channels to inhibit glucagon release. Diabetes 54:1808-1815, 2005
2) Xu E, Kumar M, Zhang Y, et al:Intra-islet insulin suppresses glucagon release via GABA-GABAA receptor system. Cell Metab 3:47-58, 2006
3) Bonner-Weir S, Orci L:New perspectives on the microvasculature of the islets of Langerhans in the rat. Diabetes 31:883-889, 1982
4) Hayashi M, Yamada H, Uehara S, et al:Secretory granule-mediated co-secretion of L-glutamate and glucagon triggers glutamatergic signal transmission in islets of Langerhans. J Biol Chem 278:1966-1974, 2003
5) Miyake K, Horikawa Y, Hara K, et al:Association of TCF7L2 polymorphisms with susceptibility to type 2 diabetes in 4,087 Japanese subjects. J Hum Genet 53:174-180, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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