icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査52巻11号

2008年10月発行

文献概要

特集 ホルモンの病態異常と臨床検査 各論Ⅰ ホルモンの病態異常と検査 8.生殖関連

1) アンドロゲン(テストステロン)

著者: 河手久弥1 柳瀬敏彦1 高柳涼一1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院病態制御内科学

ページ範囲:P.1260 - P.1264

文献購入ページに移動
はじめに

 アンドロゲンは炭素数が19個のステロイドホルモン(C19ステロイド)の総称で,精巣由来のテストステロンと副腎由来のデヒドロエピアンドロステロン(DHEA),DHEA-sulfate(DHEA-S)などが含まれる.アンドロゲンとしての生理活性は,副腎アンドロゲンであるDHEAはテストステロンの約5%と弱いことが示されている.

 テストステロンは下垂体から分泌されるゴナドトロピンである黄体形成ホルモン(luteinizing hormone;LH)の刺激により,主として精巣のライディッヒ(Leydig)細胞で産生される強力な男性ホルモンである.テストステロンの95%以上は精巣由来で,残りの5%は主に副腎において,アンドロステンジオンなどの他のステロイドから生成される.血中のテストステロンが増加すると,視床下部からのLH-RHおよび下垂体からのLH,FSHの分泌が抑制されるネガティブフィードバック機構が働き,恒常性が維持される(図1)1)

 テストステロンの多くは,前立腺や肝臓などの末梢の標的器官に取り込まれると,5α-リダクターゼ(5α-reductase)の作用により,ジヒドロテストステロン(DHT)に変換されアンドロゲン作用を発揮する.テストステロンおよびDHTは,標的細胞の細胞質に局在するアンドロゲン受容体(androgen receptor;AR)に結合すると,ARの構造変化を引き起こす.ホルモンが結合したARは細胞質から核へと移行し,標的遺伝子上のアンドロゲン応答配列に結合して,その遺伝子の転写を制御することで生物学的作用を発現する.

 テストステロンは,胎生期には外性器と内性器の分化,思春期には二次性徴の発現,成人においては性機能の維持などにおいて重要な働きをしている.また,最近のAR欠損マウスの解析から,アンドロゲンは骨量増加作用や抗肥満作用を有することが明らかになった2).さらにアンドロゲンは,神経系への作用,筋肉量の増加作用,赤血球産生刺激作用,抗動脈硬化作用なども有している.

参考文献

1) 岡部泰二郎,名和田新:テストステロン.ホルモンの事典(清野裕,千原和夫,名和田新,平田結喜緒編),朝倉書店,pp529-536,2004
2) Kawano H, Sato T, Yamada T, et al:Suppressive function of androgen receptor in bone resorption. Proc Natl Acad Sci USA 100:9416-9421, 2003
3) 柳瀬敏彦,岩本晃明:テストステロン測定の意義と問題点.泌尿器外科 19:1295-1300,2006
4) 岩本晃明,柳瀬敏彦,高栄哲,他:日本人成人男子の総テストステロン,遊離テストステロンの基準値の設定.日本泌尿器科学会雑誌 95:751-760,2004
5) 三田耕司,松原昭郎,碓井亞:簡便な唾液テストステロン酵素免疫測定.日本泌尿器科学会雑誌 96:610-616,2005
6) Arregger AL, Contreras LN, Tumilasci OR, et al:Salivary testosterone:a reliable approach to the diagnosis of male hypogonadism. Clin Endocrinol(Oxf) 67:656-662, 2007
7) 高田晋吾,宮川康,奥山明彦:続発性性腺機能低下症.別冊日本臨牀 新領域別症候群シリーズNo. 2内分泌症候群(第2版)II-その他の内分泌疾患を含めて,日本臨牀社,pp211-215, 2006
8) Lunenfeld B, Saad F, Hoesl CE:ISA, ISSAM and EAU recommendations for the investigation, treatment and monitoring of late-onset hypogonadism in males:scientific background and rationale. Aging Male 8:59-74, 2005
9) 日本泌尿器科学会/日本Men's Health医学会「LOH症候群診断ガイドライン」検討ワーキング委員会編:加齢男性性腺機能低下症(LOH症候群)診療の手引き,じほう,pp2-28, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?