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特集 ホルモンの病態異常と臨床検査 各論Ⅰ ホルモンの病態異常と検査 8.生殖関連
1) アンドロゲン(テストステロン)
著者: 河手久弥1 柳瀬敏彦1 高柳涼一1
所属機関: 1九州大学大学院医学研究院病態制御内科学
ページ範囲:P.1260 - P.1264
文献購入ページに移動アンドロゲンは炭素数が19個のステロイドホルモン(C19ステロイド)の総称で,精巣由来のテストステロンと副腎由来のデヒドロエピアンドロステロン(DHEA),DHEA-sulfate(DHEA-S)などが含まれる.アンドロゲンとしての生理活性は,副腎アンドロゲンであるDHEAはテストステロンの約5%と弱いことが示されている.
テストステロンは下垂体から分泌されるゴナドトロピンである黄体形成ホルモン(luteinizing hormone;LH)の刺激により,主として精巣のライディッヒ(Leydig)細胞で産生される強力な男性ホルモンである.テストステロンの95%以上は精巣由来で,残りの5%は主に副腎において,アンドロステンジオンなどの他のステロイドから生成される.血中のテストステロンが増加すると,視床下部からのLH-RHおよび下垂体からのLH,FSHの分泌が抑制されるネガティブフィードバック機構が働き,恒常性が維持される(図1)1).
テストステロンの多くは,前立腺や肝臓などの末梢の標的器官に取り込まれると,5α-リダクターゼ(5α-reductase)の作用により,ジヒドロテストステロン(DHT)に変換されアンドロゲン作用を発揮する.テストステロンおよびDHTは,標的細胞の細胞質に局在するアンドロゲン受容体(androgen receptor;AR)に結合すると,ARの構造変化を引き起こす.ホルモンが結合したARは細胞質から核へと移行し,標的遺伝子上のアンドロゲン応答配列に結合して,その遺伝子の転写を制御することで生物学的作用を発現する.
テストステロンは,胎生期には外性器と内性器の分化,思春期には二次性徴の発現,成人においては性機能の維持などにおいて重要な働きをしている.また,最近のAR欠損マウスの解析から,アンドロゲンは骨量増加作用や抗肥満作用を有することが明らかになった2).さらにアンドロゲンは,神経系への作用,筋肉量の増加作用,赤血球産生刺激作用,抗動脈硬化作用なども有している.
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