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文献詳細

雑誌文献

臨床検査52巻11号

2008年10月発行

文献概要

特集 ホルモンの病態異常と臨床検査 コラム

生殖神経内分泌学の新たな展開―GnIHとキスペプチンの発見

著者: 筒井和義1

所属機関: 1早稲田大学教育・総合科学学術院統合脳科学

ページ範囲:P.1207 - P.1207

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 1970年代初めにSchallyとGuilleminにより生殖腺刺激ホルモンの放出を促進させる脳ホルモンである生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotropin-releasing hormone;GnRH)が哺乳類の視床下部から発見された.一方,生殖腺刺激ホルモンの放出を抑制する脳ホルモンの存在は長く不明であったが,2000年にわれわれは生殖腺刺激ホルモンの放出を抑制する新規の脳ホルモンを鳥類の視床下部から発見して生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(gonadotropin-inhibitory hormone;GnIH)と名付けた.

 GnIHは視床下部の室傍核にあるGnIHニューロンで合成される.GnIHニューロンにはMel1cというメラトニン受容体が存在しており,メラトニンはこの受容体を介してGnIHの発現を誘導する.GnIHは正中隆起にあるGnIHニューロンの終末から分泌され,下垂体に存在するGnIH受容体(GnIH-R)を介して生殖腺刺激ホルモンの放出を抑制する.また,GnIHニューロンはGnRHニューロンにも投射しており,GnIHは下垂体のみならずGnRHニューロンに作用して生殖腺刺激ホルモンの放出を抑制する.われわれの一連の研究により,GnIHの作用により,生殖腺の発達と機能が抑制されることが明らかになった.GnIHはヒトを含めた哺乳類にも存在することから,生殖機能障害の新しい治療薬の開発に向けたGnIH研究が今後期待される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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