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特集 ホルモンの病態異常と臨床検査 コラム
脳の性差発現
著者: 佐久間康夫1
所属機関: 1日本医科大学大学院医学研究科システム生理学
ページ範囲:P.1269 - P.1269
文献購入ページに移動 男女の脳に違いがあることは,男女の立ち居振る舞いに相違があることから推論できよう.実際,画像診断により,複数の脳部位に性差があることが判明している.強い情動刺激が扁桃核に起こす反応が男女で異なることも,機能的磁気共鳴画像(fMRI)から明らかになった.ラットやサルでは生殖内分泌調節にかかわる脳部位の性差が性ホルモンの作用で生じる.ヒトでも副腎酵素欠損による副腎過形成症で,男性ホルモン分泌過剰により女児の遊びのパターンが男性化し,リポイド過形成症(Prader病)により男性ホルモン分泌が欠損する男児では遊びが女性化する.ただし,実験動物で再現できるこれら性ホルモン依存性の脳の性分化がどこまで一般化できるかは不明で,性ホルモン作用は環境要因の一つにすぎない可能性もある.実際,雌の哺乳類ではラットやサル,ヒトでさえも妊娠や子育てを経験するとオキシトシンやプロラクチン,それらの受容体発現を通じて脳の構造が変わり,行動が変化する.これまで比喩的に言われてきた「行動が脳をつくる」可能性が科学的に確かめられつつある.
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