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文献詳細

雑誌文献

臨床検査52巻12号

2008年11月発行

文献概要

今月の主題 平衡機能検査 話題

Galvanic Stimulationの新展開

著者: 都筑俊寛1 小宮卓2

所属機関: 1 2小山記念病院耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.1487 - P.1492

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1.はじめに

 頭部,特に耳後部に弱い電気刺激(galvanic stimulation)を加えると電気性身体動揺(galvanic body sway)が起こる.さらに電流を強くすると電気性眼振(galvanic nystagmus;GN)が起こる.その発生機序については,末梢前庭器や前庭神経であるといわれているが,電気刺激が前庭系のどこに働いて,眼振や身体動揺が誘発されているか決定的な説はない1~4)

 この理由として,眼球運動を記録する場合,ENG(electronystagmography)では,刺激電流がノイズとして記録に混入してしまうため眼球運動速度の定量的な解析が困難であったことが挙げられる.

 この問題を解決しGN検査を他の眼振検査と同様に広く臨床的に利用するために,近年開発された赤外線CCDカメラとコンピューターによる眼球運動記録装置(video-oculography)を用いてGNの解析を行えば,電気刺激と眼球運動の関係がより明解となると考えられるので,以下の三つの実験を計画施行した.

 健常人における電気刺激による前庭系の生理的反応を明らかにする目的で,①健常人のGNの解発閾値,電流の強さと眼振頻度の関係,電流の強さと平均緩徐相速度の関係につき検討した5)

 GN解発の電流が作用する器官を考察する目的で,②末梢前庭系が作用部位であると仮定して,内リンパ水腫による半規管および前庭機能障害であるメニエール病(Meniere disease;MD)のGNを記録解析した6).さらに,前庭神経の関与を明らかにする目的で,③前庭神経障害である聴神経腫瘍症例(acoustic nerve tumor;AT)のGNを記録解析し,健常人のGNと比較した.

参考文献

1) 時田喬:8-4電気眼振検査.CLIENT 21-21世紀耳鼻咽喉科領域の臨床-8めまい・平衡障害(小松崎篤編),中山書店,pp267-273, 1999
2) Barany R:Untersuchungen uber den vom Vestibularappartat des Ohres reflektorischausgelösten rhythmischen Nystagmus und seine Begreiterscheinung. Monatschr f Ohrenhheilk 43:191-302, 1906
3) Goldberg JM, Smith CE, Fernández C:Relation between discharge regularity and responses to externally applied galvanic currents in vestibular nerve afferents of the squirrel monkey. J Neurophysiol 51:1236-1256, 1984
4) Zink R, Bucher SF, Weiss A, et al:Effects of galvanic vestibular stimulation on otolithic and semicircular canal eye movements and perceived vertical. Electro-encephalogr Clin Neurophysiol 107:200-205, 1998
5) 小宮卓,都筑俊寛,吉本裕:赤外線眼球運動記録装置による電気性眼振の解析.Equilibrium Res 61:446-450, 2002
6) 小宮卓,都筑俊寛:Video-oculographyによるメニエール病症例の電気性眼振の解析.Equilibrium Res 65:191-196, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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