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文献概要
今月の主題 輸血の安全管理 話題
わが国における輸血副作用の現状
著者: 藤井康彦1
所属機関: 1山口大学医学部附属病院輸血部
ページ範囲:P.201 - P.204
文献購入ページに移動1.欧米での輸血副作用報告と赤十字血液センターによる輸血副作用報告の違い
世界的な副作用の調査体制の動向について,われわれは,本年の輸血細胞治療学会総会において報告を行った1).英国では,国からの要請に基づく輸血副作用の自発的報告からなる血液安全監視体制(ヘモビジランス)がSerious Hazards of Transfusion(SHOT)研究2)の形で機能している.英国に引き続き,ヨーロッパ,北米で様々な制度に基づくヘモビジランスの構築が進められている.しかし,ヘモビジランスを実現するためには輸血副作用の病態分類,重症度分類,原因検索方法の標準化が重要であり,その存在なしには,国際的な副作用の発生状況の比較はできない.このため,国際輸血学会(International Society of Blood Transfusion;ISBT)のヘモビジランス委員会3)では輸血副作用の病態分類,重症度分類の標準化案の作成がなされている(表1).
さて,赤十字血液センターへ報告された副作用の内訳4)を見るとABO型不適合輸血を含めた溶血性副作用の報告件数が極めて少ない(表2).これはABO型不適合輸血を含めた輸血間違いの報告が80%と大部分を占める前述のSHOT報告2)と大きな違いがある.一方で,輸血後肝炎の調査体制5)は,欧米に比較してわが国が優れている点である.
世界的な副作用の調査体制の動向について,われわれは,本年の輸血細胞治療学会総会において報告を行った1).英国では,国からの要請に基づく輸血副作用の自発的報告からなる血液安全監視体制(ヘモビジランス)がSerious Hazards of Transfusion(SHOT)研究2)の形で機能している.英国に引き続き,ヨーロッパ,北米で様々な制度に基づくヘモビジランスの構築が進められている.しかし,ヘモビジランスを実現するためには輸血副作用の病態分類,重症度分類,原因検索方法の標準化が重要であり,その存在なしには,国際的な副作用の発生状況の比較はできない.このため,国際輸血学会(International Society of Blood Transfusion;ISBT)のヘモビジランス委員会3)では輸血副作用の病態分類,重症度分類の標準化案の作成がなされている(表1).
さて,赤十字血液センターへ報告された副作用の内訳4)を見るとABO型不適合輸血を含めた溶血性副作用の報告件数が極めて少ない(表2).これはABO型不適合輸血を含めた輸血間違いの報告が80%と大部分を占める前述のSHOT報告2)と大きな違いがある.一方で,輸血後肝炎の調査体制5)は,欧米に比較してわが国が優れている点である.
参考文献
1) 藤井康彦:輸血副作用の病態分類,重症度,監視体制について.日本輸血学会雑誌 53:204, 2007
2) Serious Hazards of Transfusion(SHOT)Organization. http://www.shotuk.org/(2007年9月現在)
3) Robillard P:The ISBT Working Party on Haemovigilance. Transfusion Today 68:4-7, 2006
4) 赤十字血液センターへ報告された非溶血性輸血副作用-2006年.日本赤十字血液センター輸血副作用情報,0707-109, 2007
5) Satake M:Japanese repositories. Transfusion 47:1105, 2007
6) 輸血用血液製剤との関連性が高いと考えられた感染症症例-2006年.日本赤十字血液センター輸血副作用情報,0707-108, 2007
7) 「輸血副作用年次報告2006」輸血細胞治療学会ホームページ掲載.http://www.yuketsu.gr.jp/(2007年9月現在)
8) 「輸血副作用年次報告2005」輸血細胞治療学会ホームページ掲載.http://www.yuketsu.gr.jp/(2007年9月現在)
9) 医薬品・医療機器等安全性情報報告制度 独立行政法人医薬品医療機器総合機構医薬品・医療機器情報提供ホームページ.http://www.info.pmda.go.jp/info/houkoku.html(2007年9月現在)
10) 浅井善隆,佐竹正博,藤井康彦,他:重篤な急性輸血副作用の対応に関する多施設共同研究.厚生労働省科学研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業,輸血用血液及び細胞療法の安全性に関する研究,平成18年度報告書,pp41-75,2006
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