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今月の主題 自己免疫疾患の診断 話題
生物学的製剤:リウマチ治療の新時代を切り開く
著者: 金子敦史1 衛藤義人1
所属機関: 1国立病院機構名古屋医療センター整形外科・リウマチ科
ページ範囲:P.551 - P.555
文献購入ページに移動2003年7月わが国初の関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)に対する生物学的製剤,インフリキシマブ(レミケード®)が使用可能となり,RAの治療目標は疾患活動性の制御に限らず,骨関節破壊進行の抑制と可能な限り寛解を目指すものに変わった.これは単にインフリキシマブがRAに対するわが国初の抗サイトカイン製剤という特質だけでなく,RA全体の治療戦略を大きく変えるきっかけを創ったからである.同時期に市販された免疫抑制剤レフルノミド(アラバ®)は死亡例を含め薬剤性肺障害が予想外に多く発生し,“日本人には使用を慎重にすべき”となり衰退したが,その反面,インフリキシマブおよびエタネルセプト(エンブレル®)の2剤のTNF阻害薬の後押しができたことでメトトレキサート(methotrexate;MTX)の普及が著しい.1990年代に使用頻度が高かった古典的抗リウマチ剤〔conventional DMARD(disease modifying anti-rheumatic drug)〕のうち,注射用金剤(シオゾール®),ブシラミン(リマチル®),スルファサラゾピリジン(アザルフィジンEN®)に取ってかわってMTXが多く使用され,効果がなければ増量,さらには生物学的製剤との併用といった新しい治療戦略に変化したからである.このような動きを専門家の間では,不治の病と言われたRAという疾患に対し,寛解を現実のゴールにしたことから「関節リウマチのパラダイムシフト」と呼ぶ.
また,新しいTNF阻害薬2剤の有効性と安全性のエビデンスは,世界にも類をみない全例市販後調査(postmarketing surveillance;PMS)1,2)という結果でまとめられた.インフリキシマブの5,000例,エタネルセプトの7,091例がすでに集計され公表されている.特にTNF(tumor necrosis factor)-αは生態防御に深く関与する分子であることから,TNF阻害薬は投与早期の感染症に関して注意喚起が必要(表)と報告されている.
本稿ではTNF阻害薬の安全性については別稿に譲り有効性を中心に解説し,第1線の臨床医のRAの治療に対する考え方がどのように変わったか,そしてわが国のRA患者の6割近くの治療に当たっている整形外科医の新たな役割について述べる.
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