臨床検査52巻9号

2008年09月発行

今月の主題 アスベストと中皮腫 話題

アスベスト関連呼吸器疾患(中皮腫を除く)

著者： 岡輝明¹

所属機関： ¹公立学校共済組合関東中央病院病理科

ページ範囲：P.1017 - P.1021

1．はじめに

　アスベスト線維の吸入によって惹起されると考えられている呼吸器病変(肺・胸膜病変)としては，表に示した疾患あるいは病態(病変)が知られている．このうち，胸膜斑，石綿肺，中皮腫は石綿曝露との関係が深い疾患・病変と考えられ，特に，胸膜斑は石綿曝露のマーカー病変として位置づけられている重要な病変である．一方，肺癌や胸水貯留，びまん性胸膜肥厚は石綿以外の原因でも生じるため，病因としての石綿の特異性は低い．肺癌の最も重要な危険因子は喫煙であろう．

　本稿では中皮腫以外の疾患・病変を扱うが，それらのうち，胸膜斑，肺の線維化病変(石綿肺)，肺癌について病理像の概略を述べる．

参考文献

1) 高田礼子(監)，環境再生保全機構(編)：石綿(アスベスト)と健康被害―石綿による健康被害と救済給付の概要　第2版，2007

2) 森永謙二(編)：改定新版　職業性石綿ばく露と石綿関連疾患―基礎知識と労災補償，三信図書，2005

3) American thoracic society documents：Diagnosis and initial management of nonmalignant diseases related to asbestos. Am J Respir Crit Care Med　170：691-715, 2004

4) 岡輝明：アスベストによると考えられる肺・胸膜病変の病理．臨床画像　23：14-22，2007

5) 本田一穂，松下央，原満：剖検肺からみた石綿汚染―1969年と1985年の比較．日本胸部臨床　46：1003-1008，1987

6) 本間浩一：アスベストによる肺障害．呼吸　24：668-673，2005

7) 本間浩一：石綿肺を中心とした非腫瘍性肺胸膜病変の病理．日本胸部臨床　65：425-438，2006

8) 審良正則：アスベスト関連肺疾患の画像診断．日本胸部臨床　65：414-424，2006