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文献詳細

雑誌文献

臨床検査53巻11号

2009年10月発行

文献概要

特集 医療・福祉施設における感染制御と臨床検査 各論 4.感染制御に役立つ迅速診断検査

感染制御に役立つ迅速診断検査

著者: 松井秀仁1 花木秀明1

所属機関: 1北里大学北里生命科学研究所抗感染症薬研究センター

ページ範囲:P.1473 - P.1481

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はじめに

 従来の微生物検査の主な流れは,臨床検体からの起炎菌の分離培養後,菌種の同定,さらに薬剤感受性試験を行う必要があり,結果を得るまでに数日から菌種によっては1週間以上の時間が必要とされてきた.その間は医師の経験的治療しか行えず,広域スペクトルをもつ抗菌薬が安易に使用される場合が多い.そのため,時に適切な治療が行えずに患者への負担が増加するだけでなく,抗菌薬の乱用により薬剤耐性菌の増加につながる危険性を含んでいた.しかし近年,感染症の迅速診断検査を可能にした様々な方法(イムノクロマト法,polymerase chain reaction;PCR)が確立され,臨床の現場で用いられるようになってきた.

 迅速診断検査のなかで,特にイムノクロマト法は操作方法が簡便で,特別な機器や熟練した技術を必要とせず,検体採取から数十分以内に結果が得られる利便性を兼ね備えている.そのため大学病院のような大きな施設から開業医などの個人の診療所においても幅広く使用されるようになり,今日の感染症診断には不可欠な方法となっている.

 また,PCRは起因菌の標的遺伝子を指数関数的に増幅させて検出することから,1反応当たり1~10コピー程の標的DNA量で検出が可能である.つまり1-tube当たり最低1個の細菌が存在すれば検出可能と考えられるが,このtemplate添加量は1μl程度が普通の添加量であるため,少なくともサンプル中の菌数は103個/mlが必要になる.確実に検出するためには104個程度が必要と考える.また,リアルタイム測定装置を用いればサイクルごとのDNA増幅を検出し,定量的な検査を行うことも可能である.

 本稿では,これら迅速診断検査のうち抗原抗体反応を用いた免疫学的検査法とPCRに代表される核酸増幅検査法について,それぞれの原理,特徴について述べる.ただし,単なる研究用の試薬として販売され,体外診断薬の認可を受けていないキットも含まれるので,その点についてはご注意願いたい.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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