文献詳細
文献概要
特集 医療・福祉施設における感染制御と臨床検査 各論 5.感染制御に役立つ遺伝子学的検査
感染制御に役立つ遺伝子学的検査
著者: 山本達男1 高野智洋1 矢部静1 樋口渉1 岩尾泰久1
所属機関: 1新潟大学大学院医歯学総合研究科国際感染医学講座細菌学分野
ページ範囲:P.1484 - P.1488
文献購入ページに移動Multilocus sequence typing(MLST)は,ゲノム上に位置する複数個(通常7つ)のhouse-keeping geneの部分配列をもとにしてコンピューター上で型別する方法で,1998年以降グローバル分子疫学解析法の“gold standard”として定着しつつある1).その特徴は,①菌株の高い識別能力,②データ作製・解析の標準化の容易さ,③世界各地からの容易なアクセスと最新情報の共有にある.代表的な解析例には,黄色ブドウ球菌(
Pulsed-field gel electrophoresis(PFGE)は1984年に開発され,その後広く疫学解析で用いられてきた代表的な標準法である.院内での流行解析では特に威力を発揮する.ゲノムの制限酵素切断パターンを比較する方法で,患者・感染者から同じ切断パターンの菌株が得られた場合には同じ菌株による流行であると判断し,一般に3つ以上の異なったバンドが得られた感染例では異なった菌株による同時多発例であると判断する.同一菌株による流行中ではあるが,ある菌株にゲノムの再編成(変異)が起こった場合には,当該菌株が著しく異なった切断パターンを与えることがある.
病原性遺伝子のPCR検査は,病型の推定に役立つ.特定の遺伝子と典型的な臨床症状の関連が確立している例には,志賀毒素遺伝子と腸管出血性大腸菌感染症,コレラ毒素遺伝子とコレラ,cagA遺伝子と消化性潰瘍などがある.一方で,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant
参考文献
掲載誌情報