文献詳細
文献概要
今月の主題 生体内微量元素 各論
尿中微量元素
著者: 西牟田守1
所属機関: 1独立行政法人国立健康・栄養研究所ミネラル研究室
ページ範囲:P.177 - P.179
文献購入ページに移動はじめに
「微量元素」など,元素レベルで物質を分類するときの用語は,厳密には定義されていないので,はじめに,本稿で用いる用語を定義する必要がある.
1.ヒトにおける必須性による元素の分類
人が生命を維持するために必要とする元素を「必須元素」,必要性が科学的に証明されていない元素を「その他の元素」とよぶ.なお,その他の元素は今後必須性が明らかにされる可能性があるので「非必須性元素」とよぶことはできない.
2.食事摂取量による元素の分類
H, C, N, Oの4元素は有機物を構成する主要な元素であり,「主要元素」とよぶ.また,主要元素以外の元素の総称として「ミネラル」という用語を用いる.通常の食事で1日100mg以上摂取するミネラルは,Na, K, Cl, Ca, Mg, P, Sの7元素を「主要ミネラル」とよぶ.主要元素は,すべて必須ミネラルである.主要ミネラル以外のミネラルを「微量元素」とよぶ.微量元素のうちヒトにおける必須性が明らかな元素を「必須微量元素」とよぶ.微量元素のうち通常の食事で1日mg以上摂取するミネラルを「微量元素Ⅰ」とよぶ.「微量元素Ⅰ」のうちZn, Fe, Cu, Mnの4元素は必須微量元素である.微量元素ⅠのなかにはF, Sr, Rbのように必須性が明らかでない元素も存在する.微量元素のうち通常の食事で1日mg未満しか摂取しないミネラルを「微量元素Ⅱ」とよぶ.微量元素ⅡのうちCo, Cr, I, Mo, Seの5元素は必須微量元素である.微量元素Ⅱのその他の多くのミネラルは,その生理効果が明らかではない.
3.生理的存在部位にいるミネラルの分類.
ミネラルのなかには生理的存在部位により分類できるものがある.細胞外液に比べて細胞内の濃度が高い必須ミネラルを「細胞内ミネラル」とよぶ.細胞内ミネラルはK, Mg, P, Zn, Feである.逆に,細胞内に比較して細胞外液の濃度が高い必須ミネラルを「細胞外ミネラル」とよぶ.細胞外ミネラルはNa, Cl, Caである.その他の必須ミネラルは,細胞内外で大きく濃度が異ならない(Cu),動物の細胞中にはわずかにしか存在しない(Mn),研究が進展していない(S, Co, Cr, I, Mo, Se)などの理由で何れの分類にも属さない.骨のミネラル組成は細胞とも細胞外液とも異なる.骨を構成し,骨が貯蔵庫となっている必須ミネラルを「骨ミネラル」とよぶ.骨ミネラルは細胞内ミネラルのうちMg, P, Zn,細胞外ミネラルのうちNa, Caである(表1)1,2).
「微量元素」など,元素レベルで物質を分類するときの用語は,厳密には定義されていないので,はじめに,本稿で用いる用語を定義する必要がある.
1.ヒトにおける必須性による元素の分類
人が生命を維持するために必要とする元素を「必須元素」,必要性が科学的に証明されていない元素を「その他の元素」とよぶ.なお,その他の元素は今後必須性が明らかにされる可能性があるので「非必須性元素」とよぶことはできない.
2.食事摂取量による元素の分類
H, C, N, Oの4元素は有機物を構成する主要な元素であり,「主要元素」とよぶ.また,主要元素以外の元素の総称として「ミネラル」という用語を用いる.通常の食事で1日100mg以上摂取するミネラルは,Na, K, Cl, Ca, Mg, P, Sの7元素を「主要ミネラル」とよぶ.主要元素は,すべて必須ミネラルである.主要ミネラル以外のミネラルを「微量元素」とよぶ.微量元素のうちヒトにおける必須性が明らかな元素を「必須微量元素」とよぶ.微量元素のうち通常の食事で1日mg以上摂取するミネラルを「微量元素Ⅰ」とよぶ.「微量元素Ⅰ」のうちZn, Fe, Cu, Mnの4元素は必須微量元素である.微量元素ⅠのなかにはF, Sr, Rbのように必須性が明らかでない元素も存在する.微量元素のうち通常の食事で1日mg未満しか摂取しないミネラルを「微量元素Ⅱ」とよぶ.微量元素ⅡのうちCo, Cr, I, Mo, Seの5元素は必須微量元素である.微量元素Ⅱのその他の多くのミネラルは,その生理効果が明らかではない.
3.生理的存在部位にいるミネラルの分類.
ミネラルのなかには生理的存在部位により分類できるものがある.細胞外液に比べて細胞内の濃度が高い必須ミネラルを「細胞内ミネラル」とよぶ.細胞内ミネラルはK, Mg, P, Zn, Feである.逆に,細胞内に比較して細胞外液の濃度が高い必須ミネラルを「細胞外ミネラル」とよぶ.細胞外ミネラルはNa, Cl, Caである.その他の必須ミネラルは,細胞内外で大きく濃度が異ならない(Cu),動物の細胞中にはわずかにしか存在しない(Mn),研究が進展していない(S, Co, Cr, I, Mo, Se)などの理由で何れの分類にも属さない.骨のミネラル組成は細胞とも細胞外液とも異なる.骨を構成し,骨が貯蔵庫となっている必須ミネラルを「骨ミネラル」とよぶ.骨ミネラルは細胞内ミネラルのうちMg, P, Zn,細胞外ミネラルのうちNa, Caである(表1)1,2).
参考文献
1) Nishimuta M:The concept(intra and extra cellular minerals). In:Metal ions in biology and medicine(Collery P, Poirier LA, Manfait M, Etienne J-C, eds), John Libbey Eurotext, Paris, pp69-74, 1990
2) Nishimuta M:The concept of intracellular-, extracellular-and bone-minerals. BioFactors 12:35-38, 2000
3) 児玉浩子,西牟田守,児玉直子,他:未発表資料
4) Iyengar GV:Concentrations of 15 trace elements in some selected adult human tissues and body fluids of clinical interest from several countries:Results from a pilot study for the establishment of reference values. Kernforschungsanlage Jülich GmbH. FRG, 1985
5) 大森俊夫,西牟田守:大学生男子長距離陸上選手の亜鉛出納―シーズン終了後の検討―.体力科学 47:279-286, 1998
6) Ikeda M, Tomita H, Sekimoto K:Drug-induced taste disorder:Due to Zinc chelation? In:Trace elements in clinical medicine(Tomita H, ed), Springer-Verlag, Tokyo, pp254-260, 1990
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