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文献詳細

雑誌文献

臨床検査53巻7号

2009年07月発行

文献概要

今月の主題 唾液の臨床検査 話題

喫煙マーカーとしてのコチニン,ビスフェノールA ELISA測定―唾液試料を中心に

著者: 米田孝司1 内田浩二1 片山善章2

所属機関: 1オリエンタル酵母工業株式会社長浜事業所 2神戸常磐大学保健科学部

ページ範囲:P.823 - P.828

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1.はじめに

 喫煙は肺およびバッカル/鼻腔皮膜組織からのニコチン吸収となり,ニコチンの吸収は非常に速く,肝臓のCYP2A6により8割はコチニンに代謝され,トランス3´-水酸化コチニンへと無害な物質に変わり,70~80%が腎臓から排泄される.図11)にニコチンとコチニンの代謝とCYP2A6多型について示した.さらに,吸収されたニコチンは主にトランス3´-水酸化コチニンとして排泄され,コチニン(15.0~24.5%),コチニンN-グルクロン酸抱合体(5.1~10.2%),トランス3´-水酸化コチニンO-グルクロン酸抱合体(5.3~12.9%)として主に排泄される1).体液中のコチニンは安定で約17時間の長い半減期がある.また,ニコチン代謝が短いので喫煙者が再度すぐに喫煙したくなり,無害なコチニンにならなかった残りの2割が有害な発癌物質などに転換されるともいわれている.したがって,血液,尿,唾液を試料とする場合は半減期の短いニコチンよりも長いコチニンのほうが有用である.喫煙者の接着分子sVCAM-1(vascular cell adhesion molecule-1)と血漿コチニンに正相関を認めたので動脈硬化症や喫煙高血圧と関連があるという報告や,Wilsonらは環境中たばこ煙曝露での白人子どもよりアフリカ系アメリカ人の子どもの血清と毛髪のコチニン濃度は有意に高値を示すと報告している.

 コチニンの分析にはLC/MS(liquid chromatography/mass spectrometry:液体クロマトグラフィ質量分析計),GC/MS(gas chromatography/mass spectrometry:ガスクロマトグラフィ質量分析計),HPLC(high-speed liquid chromatography:高速液体クロマトグラフィ)などがあり,特別の設備や複雑な操作を要求するが,ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay:酵素免疫測定)法は比較的簡便である.

 Accuracy-One社のSmoke-COTテストのように尿中コチニン濃度200ng/mlがcut-offとなるイムノクロマト法も市販されており,喫煙状態の判定のみの目的に使用されているが2),唾液使用には感度が低すぎる.石川ら3)~6)は抗アミノエチルコチニン抗体および抗6-アミノニコチン抗体を用いる非競合法の高感度なELISA法を報告しており,コチニンはビオチン化効率が高く,0.03fmolの測定感度を得ているが,抗体の特異性が低いという問題がある.

 近年,受動喫煙は大きな社会問題となり,受動喫煙の生体への影響および取り込み検査のために高感度コチニン測定の必要性が望まれている.現在市販の簡易キットは喫煙者を対象としているが,受動喫煙レベル感度のELISA試薬は少ない.血液,尿,唾液を試料とする能動的および受動的喫煙のコチニン測定ELISAキットを多く扱っている会社の製品と性能評価の一覧を表17)に示した.唾液をスポンジに吸わせてその唾液からニコチンの代謝物であるコチニンを測定する試薬もある.

参考文献

1) Nakajima M, Yamamoto T, Nunoya K, et al:Role of human cytochrome P4502A6 in C-oxidation of nicotine. Drug Metab Dispos 24:1212-1217, 1996
2) "COT" One Step Cotinine Test Device(http://www.technicon.jp/page059.html)(2009年4月15日参照)
3) 石川栄治,橋田誠一,河野武幸,他:体液中の微量のニコチン及びコチニンの定量法開発に関する研究―酵素免疫測定法による検討―.平成3年度喫煙科学研究財団研究年報:687-692,1992
4) 石川栄治,橋田誠一,広田晃一:体液中の微量のニコチン及びコチニンの定量法開発に関する研究―酵素免疫測定法による検討―.平成4年度喫煙科学研究財団研究年報:789-793,1993
5) 石川栄治,西片一朗,橋田誠一:体液中の微量のニコチン及びコチニンの定量法開発に関する研究―酵素免疫測定法による検討―.平成5年度喫煙科学研究財団研究年報:836-843,1994
6) 西片一朗,橋田誠一,石川栄治,他:体液中の微量のニコチン及びコチニンの定量法開発に関する研究―酵素免疫測定法による検討―.平成6年度喫煙科学研究財団研究年報:866-890,1995
7) コスミックコーポレーション:http://www.cosmic-jpn.co.jp/research_ef.html(2009年4月15日参照)
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9) 柿島博志,大熊博,阿部克司,他:ELISA法キットによるコンポジットレジン充填後の唾液中ビスフェノールAの測定.環境ホルモン学会研究発表会要旨集 4:421, 2001
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11) Kodaira T, KATO I, LI J, et al:Novel ELISA for the measurement of immunoreactive bisphenol A. Biomed Res 21:117-121, 2000
12) 小平司,他:内分泌撹乱物質,bisphenol-Aの簡易ELISAの確立とその評価.消化管ホルモン:74-76,2000
13) 臼杵靖晃,近藤雅信,小栗英生,他:ELISA法とHPLC法によるヒト尿中ビスフェノールAの測定値の比較.BIO Clinica 15:145-148, 2000
14) Watanabe S, Yamaguchi M, Sobue T, et al:Pharmacokinetics of soybean isoflavones in plasma, urine and feces of men after ingestion of 60 g baked soybean powder(kinako). J Nutr 128:1710-1715, 1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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