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今月の主題 POCT,医療におけるその役割 話題―道具を知り,動きを知る
POCTにおける遺伝子検査の活用
著者: 玉造滋1 坂倉康彦1 桜井みどり1
所属機関: 1ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社IVD事業本部
ページ範囲:P.85 - P.91
文献購入ページに移動1980年代にPCRが開発され1),感染症,遺伝病の検査や法医学など,様々な遺伝子関連検査にその技術が応用されてきた.当初,PCRアッセイ技術は大学病院の研究室で専門家の手で構築され,特殊検査の扱いを受けていた.しかし,広くヒトの診断に用いるべく慎重に改良が重ねられ,ロシュ・ダイアグノスティックス社(以下,弊社)のアンプリコアシリーズの普及とともに,感染症の検査(核酸検査領域)を中心として大学病院や市中病院の中央検査室において実施が可能となっていった.
その後さらなる技術革新により,現在では病院における少数検体から,検査センターにおける多数検体までをルーチン検査として扱えるようになっている.これらの検査は一般に,①体液から標的となる核酸の抽出,②その核酸増幅に続いて,③増幅されたDNA(アンプリコン)を検出するといった3段階で進められる.アンプリコンの検出には従来,電気泳動が用いられてきたが,病院での一般ルーチン検査に適用させるため,弊社では酵素免疫法(ELISA法)類似の96穴マイクロプレートでの検出系を開発し,アンプリコア製品に用いてきた.さらに1990年代にはreal-time PCR技術2)の導入により,PCRと並行して蛍光シグナルを発生させ,遺伝子増幅をリアルタイムでモニターすることが可能となり,PCRの終了と同時に遺伝子の定量や定性の判定結果が得られるようになった.検査工程の自動化も進められ,ウイルス検査などの血清や血漿を用いる検査は,検体の懸架後は結果の報告まで検査技師の手を煩わせない完全自動化が実現している(コバスタックマン「オート」シリーズ).
しかし,多数検体処理を目的とするため,システムが比較的大がかりであり,イムノクロマト法(妊娠診断薬やインフルエンザ簡易検査のスティックをイメージされたい)や尿試験紙のように,“診療・看護などの医療現場での臨床検査”での利用には至っていない.
近年ではバイオテクノロジー,電子機器技術,さらにはマイクロ流路技術の進歩により,PCR関連機器の小型化が進み,抽出装置と増幅検出器が一体化したパーソナルなreal-time PCR装置も登場しはじめている.さらに,安く簡便な核酸抽出・増幅システム,電気泳動装置あるいは増幅を伴わない直接検出系などが登場しており,これらを組み合わせれば近い将来にPOCT-PCRが可能になるかもしれない.
本稿ではこれまで試みられてきた遺伝子関連検査領域のPOCTについて紹介し,その課題について考察する.
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