文献詳細
文献概要
今月の主題 ファーマコゲノミクス 話題
ワルファリンのファーマコゲノミクス
著者: 越前宏俊1
所属機関: 1明治薬科大学薬物治療学
ページ範囲:P.1188 - P.1192
文献購入ページに移動1.はじめに
ワルファリンは一部のヨーロッパ(ドイツなど)を除いて本邦や米国では長期経口投与可能な唯一の抗凝固薬として50年以上静脈血栓症と心房細動に伴う血栓塞栓症の治療と予防などに使用されてきた.米国では,ルーズベルト大統領の心筋梗塞治療に使用されたことを契機として広く患者にも認知度が高まったが,本邦では数年前に元巨人軍の長嶋監督が心房細動に合併した心原性脳血栓塞栓症の2次予防に使用したことをきっかけとして,心房細動患者に対する使用が増加したと言われている.
この薬物は本邦において50年以上使用された結果,薬価は1錠9.7円と事実上の底値でありながら,年間70億円程度の売り上げがあるという特異な薬物である.抗凝固薬としてのワルファリンの効果は多数のエビデンスにより確立しているが,同時に副作用も多いことでも有名で副作用調査研究では常にインスリンと並んで薬物副作用の原因薬として首位を争っており,用量設定が難しい薬物である.このような臨床事情を背景にして,近年ワルファリンの応答性の個人差をゲノム薬理学(ファーマコゲノミクス:PGx)の手法により解明し,臨床応用を試みる研究が多数行われている.
ワルファリンは一部のヨーロッパ(ドイツなど)を除いて本邦や米国では長期経口投与可能な唯一の抗凝固薬として50年以上静脈血栓症と心房細動に伴う血栓塞栓症の治療と予防などに使用されてきた.米国では,ルーズベルト大統領の心筋梗塞治療に使用されたことを契機として広く患者にも認知度が高まったが,本邦では数年前に元巨人軍の長嶋監督が心房細動に合併した心原性脳血栓塞栓症の2次予防に使用したことをきっかけとして,心房細動患者に対する使用が増加したと言われている.
この薬物は本邦において50年以上使用された結果,薬価は1錠9.7円と事実上の底値でありながら,年間70億円程度の売り上げがあるという特異な薬物である.抗凝固薬としてのワルファリンの効果は多数のエビデンスにより確立しているが,同時に副作用も多いことでも有名で副作用調査研究では常にインスリンと並んで薬物副作用の原因薬として首位を争っており,用量設定が難しい薬物である.このような臨床事情を背景にして,近年ワルファリンの応答性の個人差をゲノム薬理学(ファーマコゲノミクス:PGx)の手法により解明し,臨床応用を試みる研究が多数行われている.
参考文献
1) Bates SM, Greer IA, Pabinger I, et al:Venous thromboembolism, thrombophilia, antithrombotic therapy, and pregnancy:American College of Chest Physicians Evidence-Based Clinical Practice Guidelines (8th Edition), Chest 133:844S-886S,2008
2) Rettie AE, Tai G:The pharmocogenomics of warfarin:closing in on personalized medicine. Mol Interv 6:223-227,2006
3) http://www.cypalleles.ki.se/(2010年7月3日現在)
4) Caldwell MD, Awaqd T, Johnson JA, et al:CYP4F2 genetic variant alters required warfarin dose. Blood 111:4108-4112,2008
5) D'Andrea G, D'Ambrosio RL, Di Perna P, et al:A polymorphism in the VKORC1 gene is associated with an interindividual variability in the dose-anticoagulant effect of warfarin. Blood 105:645-649,2005
6) Wadelius M, Chen LY, Lindh JD, et al:The largest prospective warfarin-treated cohort supports genetic forecasting. Blood 113:784-792,2009
7) International Warfarin Pharmacogenetics Consortiumu;uKlein TE, Altman RB, Eriksson N, et al:Estimation of the warfarin dose with clinical and pharmacogenetic data, N Engl J Med 360:753-764,2009
8) Anderson JL, Horne BD, Stevens SM, et al:Randomized trial of genotype-guided versus standard warfarin dosing in patients initiating oral anticoagulation. Circulation 116:2563-2570,2007
9) Li C, Schwarz UI, Ritchie MD, et al:Relative contribution of CYP2C9 and VKORC1 genotypes and early INR response to the prediction of warfarin sensitivity during initiation of therapy. Blood 113:3925-3930,2009
10) Lenzini P, Wadelius M, Kimmel S, et al:Integration of genetic, clinical and INR data to refine warfarin dosing. Clin Pharmacol Ther 87:572-578,2010
11) http://www.warfarindosing.org(2010年7月3日現在)
掲載誌情報