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特集 新時代のワクチン戦略について考える 各論 2. 任意接種のワクチン
7) B型肝炎
著者: 藤澤知雄1
所属機関: 1済生会横浜市東部病院小児肝臓部門
ページ範囲:P.1376 - P.1382
文献購入ページに移動本邦では,HBVキャリア化は母子感染に限ると頑なに信じ,旧厚生省の母子感染防止のプロトコールを順守している.これは完遂できれば優秀なプロトコールであるが,初回のHBIG投与が遅れがちなる,初回のHBワクチンを接種する前のHBs抗原の検査結果の誤判断,里帰り出産による追跡中断,基礎免疫成立まで生後3か月を要する,など多くの欠点を有している.したがって,母子感染防止が不可能な胎内感染例(早期HBs抗原陽転例)以外に,産科と小児科の連携ミスなど人為的な要因による予防不成功例が増加している.さらに父子感染を中心とした母親以外の家族内感染も無視できない.一方,外国由来の遺伝子型AのHBVが主にSTDとして増加している.この型のHBV感染では,成人でも急性肝炎にとどまらず持続感染がみられることがある.新生児期にHBワクチンを接種すると,追加ワクチンなしでも少なくとも若年成人まではHBV感染が防げることが知られている.
参考文献
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