臨床検査55巻7号

2011年07月発行

今月の主題 臨床生理機能検査におけるリスクマネジメント 各論

循環機能検査とリスクマネジメント

著者： 司茂幸英¹

所属機関： ¹杏林大学保健学部臨床血液学・生理機能検査学教室

ページ範囲：P.649 - P.656

循環機能検査の主要なリスクは患者取り違え，技術的エラー，所見の見落とし，患者急変などに対するものである．患者情報・検査依頼情報のミスはシステム化により手入力操作を減らすことで対応する．技術的エラーや所見の見落としの対策は，教育研修の実施と，要点チェック表の作成および運用である．循環機能検査を受ける患者は急性冠症候群や不整脈などの生命にかかわる心イベントの発生や，治療で使用する医療用具にかかわるトラブルが多い．これらの対応策として患者の身体的状況・情緒的状態・意識状態などを的確に観察・判断できるスタッフの配置と，患者急変・防災対応の定期訓練の実施，加えて絶えず患者に注意を払える環境を構築することである．そのため検査への積極的な看護師の介入が推奨される．また患者急変時の迅速な対応に関して，検査室スタッフエリアと患者待合エリアが相互に見通せる検査室デザインが有効であると考えられる．

参考文献

1）リスクマネージメント委員会：杏林大学医学部付属病院医療安全マニュアル，6版，pp10-11，2009

2）リスクマネージメント委員会：杏林大学医学部付属病院医療事故防止対策マニュアル，9版，p155，2010

3）東京都臨床検査技師会生理検査研究班：基礎から学ぶ生理機能検査，pp30-32，2006

4）川久保清：運動負荷心電図―その方法と読み方，2版，医学書院，2010

5）ACC/AHA guidelines for exercise testing：executive summary. A report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (Committee on Exercise Testing). Circulation　96：345-354，1997

6）西村恒彦(編)：目で見る循環器病シリーズ10―心臓核医学検査，メジカルビュー，pp78-89，1992

7）司茂幸英：病室検査時の注意点．Med Technol　27：1075-1079，1999

8）有賀俊之，佐藤英樹，司茂幸英，他：病棟出張心電図検査に係わるMRSAの検出状況と感染防止対策．医学検査　44：644，1995

9）司茂幸英，並木薫，鈴木政子，他：心電図検査．医学検査　57：1014-1017，2008

10）患者誤認事故予防のための院内管理体制の確立方策に関する検討会：患者誤認事故防止策に関する検討会報告書，厚生省健康政策局総務課，pp24-26，1999