文献詳細
文献概要
今月の主題 鉄代謝のバイオマーカー 話題
鉄キレート剤が血清鉄・UIBCに及ぼす影響
著者: 生田克哉1
所属機関: 1旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野
ページ範囲:P.1115 - P.1119
文献購入ページに移動1.はじめに
近年使用可能になった鉄キレート剤デフェラシロクス(deferasirox;DFX)は,経口bioavailabilityが高く,血中半減期も長いため,1日1回の経口投与で有効な鉄除去が行え,世界中で鉄過剰症に対して使用されている.2008年から本邦でも輸血後鉄過剰症に対してのみだが保険適用になり,広く使用されるようになっている.
しかし,DFXによる鉄キレート療法中に,血清鉄や不飽和鉄結合能(unsaturated iron-binding capacity;UIBC)が大きく上昇し,生体内鉄動態の変動として十分に説明できない症例が経験されており,筆者の施設でも同様の症例を経験した.当科での症例は輸血依存性の骨髄異形成症候群で,血清フェリチン値が約3,000ng/mlで肝機能障害も呈しており,DFX投与を開始したところ,図1のように,血清フェリチン値は低下しており鉄キレート自体は順調に進んでいると考えられたが,血清鉄およびUIBCが異常に増加するようになった.当初,DFX投与が肝臓でのトランスフェリン(transferrin;Tf)発現亢進をきたしているのではないかと考えたが,予想に反してTf量は少なく,さらに競合的蛋白結合分析法(competitive protein binding assay;CPBA法)で測定したUIBC値も低かった.そのため,DFXが通常血清鉄やUIBCの測定に使用される比色系に対して直接的に影響を与えている可能性を考え,検討を行った1).
近年使用可能になった鉄キレート剤デフェラシロクス(deferasirox;DFX)は,経口bioavailabilityが高く,血中半減期も長いため,1日1回の経口投与で有効な鉄除去が行え,世界中で鉄過剰症に対して使用されている.2008年から本邦でも輸血後鉄過剰症に対してのみだが保険適用になり,広く使用されるようになっている.
しかし,DFXによる鉄キレート療法中に,血清鉄や不飽和鉄結合能(unsaturated iron-binding capacity;UIBC)が大きく上昇し,生体内鉄動態の変動として十分に説明できない症例が経験されており,筆者の施設でも同様の症例を経験した.当科での症例は輸血依存性の骨髄異形成症候群で,血清フェリチン値が約3,000ng/mlで肝機能障害も呈しており,DFX投与を開始したところ,図1のように,血清フェリチン値は低下しており鉄キレート自体は順調に進んでいると考えられたが,血清鉄およびUIBCが異常に増加するようになった.当初,DFX投与が肝臓でのトランスフェリン(transferrin;Tf)発現亢進をきたしているのではないかと考えたが,予想に反してTf量は少なく,さらに競合的蛋白結合分析法(competitive protein binding assay;CPBA法)で測定したUIBC値も低かった.そのため,DFXが通常血清鉄やUIBCの測定に使用される比色系に対して直接的に影響を与えている可能性を考え,検討を行った1).
参考文献
1) Ikuta K, Ito S, Tanaka H, et al : Interference of deferasirox with assays for serum iron and serum unsaturated iron binding capacity during iron chelating therapy. Clin Chim Acta 412:2261-2266,2011
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