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文献詳細

雑誌文献

臨床検査58巻6号

2014年06月発行

文献概要

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あとがき

著者: 山内一由

所属機関:

ページ範囲:P.776 - P.776

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 暖かな陽気になりました.今年2月,記録的な豪雪が日本各地を大混乱に陥れましたが,そんな出来事がまるで夢であったかのように感じられるほどです.これほどまでに極端な気候の変化を経験したのは初めてのように思います.メリハリがあるからこそ,穏やかな季節の到来がよりいっそう,うれしく感じられます.季節のうつろいは前向きな気持ちにさせてくれます.一方,季節と同様に激変したSTAP細胞のニュースは,季節とは真逆のインパクトを与えました.抱かせた期待の大きさが絶大過ぎたがために,失望感をひときわ強くしました.斬新な発想がなければ,歴史に刻まれるような大発見はできませんが,型破りであっても許されるのはあくまでも発想であって,研究倫理の逸脱は決してあってはならないという,当たり前過ぎる教訓を強烈に示すことになりました.うかがい知れないさまざまな問題があったのかもしれませんが,わが国における医科学研究の信用を失墜させた責任は重大です.たとえSTAP細胞が存在したとしてもです.信頼を完全に回復するには,新たな多能性幹細胞を見いだすより多くの時間を費やさなければならないかもしれません.

 私たちが日々取り組んでいる臨床検査も,ひとたび信頼を損ねるようなことがあると,信頼回復は容易ではありません.時には,「検査しても無駄」あるいは「検査室は当てにならないから外注しよう」と三くだり半を押されてしまうほど,著しく信用を失うようなことすらあります.そうなると検査室はもちろんですが,それ以上に不利益をこうむるのは患者さんです.「外注しよう」ならまだしも,「無駄」と判断されてしまっては,どんなに有益な検査であっても患者さんに還元される機会を逸してしまう訳ですから.チーム医療を根本から崩すような事態を,医療人自らが招くようであってはいけません.重苦しい話になってしまいました.申し訳ございません.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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