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書評 誰も教えてくれなかった 乳腺エコー
著者: 遠藤登喜子12
所属機関: 1国立病院機構東名古屋病院乳腺科 2名古屋医療センター放射線科
ページ範囲:P.79 - P.79
文献購入ページに移動乳腺超音波検査は近年,マンモグラフィ検診の普及により発見される異常の精密検査の必要性から,また,マンモグラフィ検診の精度補完のための手法として注目すべき変化を示してきた.しかし,本書にも書かれているが,超音波検査では視触診で検出された所見の裏付け検査法として,病変のみが検討されることがほとんどであった.それは,超音波検査が断層像として得られる画像情報であり,3次元的情報を記録・提供しがたい検査法であったことにもよっている.
近年,腫瘤像を形成しない病変−非腫瘤性病変の診断の重要性が認識されることにより,正常乳腺から非腫瘤性病変を検出すること,病変と正常乳腺の鑑別など,正常乳腺像を意識することの重要性が脚光を浴びるようになってきた.従来も,正常乳腺の超音波画像を前に,“いったいこの画像は何を見ているのだろう”とつぶやくことはあったが,超音波画像が組織の何を反映しているか,明快なコンセンサスは得られないままであった.そして,超音波の屈折・反射・散乱(後方散乱)による画像特性と組織を対応させたとき,われわれの目は乳腺上皮のみならず,間質にも拡大された.組織学的構造という大きな枠組みの中,細胞と間質,両者の密度と配置が超音波画像を成り立たせている.これに気が付いたとき,超音波による乳房構造の解像は「目からうろこ」であった.
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