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雑誌詳細

文献概要

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ Ⅲ章 報告前に必要なチェック 〔生化学検査〕

ChE

著者: 刈米和子1

所属機関: 1公益財団法人東京都保健医療公社荏原病院

ページ範囲:P.1200 - P.1204

緊急性

 血清アルブミン(albumin:Alb)の値が正常であるにもかかわらず,コリンエステラーゼ(cholinesterase:ChE)が35U/L以下を示すときは,患者が非常に危険な状態である可能性を表しているので,即刻,臨床への報告が必要である1,2).患者所見として低体温,めまい,目のかすみ,嘔吐,呼吸困難,意識障害,失禁などがみられるようなら,医師に対して何らかの中毒の可能性があることを伝える3)

 対処に緊急を要する低ChE血症は,以前は農薬や,殺虫剤の過誤または故意の摂取による有機リン中毒によるものが多かったが,近年は高齢者の排尿障害や筋無力症などの治療薬である間接型コリン作動薬(可逆的ChE阻害剤)の過剰投与によるものもある.低ChE血症はこの間接型コリン作動薬の重篤な副作用“コリン作動性クリーゼ”の危険域を示す唯一の検査項目であるため,大変重要である〔表1〕1,4).代表的な間接型コリン作動薬を表2に示す.

参考文献

1)刈米和子,島谷佳見,栗原利和,他:コリン作動性クリーゼのリスク回避指標の探索.臨病理 58:972-978,2010
2)上田喜一,西村正雄:農薬による中毒,有毒リン剤.中毒症─基礎と臨床,朝倉書店,pp175-185,1975
3)ウブレチド®錠5mg.医薬品インタビューフォーム 第4版,鳥居薬品,pp10-12,2007
4)刈米和子:低コリンエステラーゼ血症とコリン作動性クリーゼ─排尿障害治療薬の副作用の判別指標および判別値.検と技 39:544-547,2011
5)刈米和子:臨床化学検査 酵素.Med Tchnol 29(臨時増刊):1533,2001
6)池本正生,戸谷誠之:コリンエステラーゼ.Med Technol 13:568-577,1985
7)刈米和子:最新臨床化学検査法─コリンエステラーゼ.Med Technol 26:1333-1341,1998
8)前川真人,村本良三,清宮正徳,他:血清アルブミン測定値についての提言書─BCG法とBCP改良法による測定値の差の取り扱い方.臨病理 62:5-9,2014
9)Osawa S, Kariyone K, Ichihara F, et al:Development and application of serum cholinesterase activity measurement using benzoylthiocholine iodide. Clin Chim Acta 351(1-2):65-72,2005
10)刈米和子,藤田淑香,汐谷陽子:C反応性蛋白の血清アルブミン測定への関与と栄養状態識別値への影響.生物試料分析 33:383-390,2010
11)須藤加代子:低コリンエステラーゼ血症.検と技 23:993-997,1995

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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