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増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ Ⅲ章 報告前に必要なチェック 〔心電図検査〕
ST変化(ST低下,ST上昇)
著者: 菊地隆司1 石綿清雄2
所属機関: 1国家公務員共済組合連合会虎の門病院臨床生理検査部 2国家公務員共済組合連合会虎の門病院循環器センター内科
ページ範囲:P.1296 - P.1301
文献購入ページに移動ST部分の評価は,心筋虚血を示唆する胸部症状を有する場合,特にそれが救急外来では,患者到着時の最優先確認事項である.心筋虚血の広がりが心内膜下にとどまればST低下を,虚血が高度で心外膜下筋層まで及ぶ貫壁性虚血であればST上昇を示す.ST上昇は,迅速に再灌流療法の適応を検討すべき徴候であり,心筋救済の観点から,急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)では治療戦略の中心的役割を担う指標である.
生理的な変動要因など,心筋虚血以外の因子によってもST変化は生じうる.何の患者情報もなく,たった1枚の心電図の微弱なST変化のみから虚血診断を確定することは困難である.実際は病歴聴取,身体所見,生化学心筋障害マーカー,心臓エコーなどから総合的に診断され,微弱なST変化でも病歴から心筋虚血を疑えば,有意なST変化として捉えられる.一方,迅速な治療が要求されるST上昇型心筋梗塞(ST elevation myocardial infarction:STEMI)は,心電図のみから判断できる病態である.
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