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文献詳細

雑誌文献

臨床検査59巻12号

2015年11月発行

文献概要

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あとがき

著者: 岩田敏

所属機関:

ページ範囲:P.1464 - P.1464

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 季節性の移り変わりとは不思議なもので,当たり前のこととはいいながらも,暦とよく連動していることにいつも感心させられます.今年の夏,東京では猛暑日の連続がついに記録を更新し,まだまだ続くのかといささかウンザリしていたところへ,立秋を過ぎて,“暑中お見舞い”を“残暑お見舞い”と書かなければならなくなった週末を迎えた途端に,猛暑日が途切れたのです.まさに暦通りの変化に驚くとともに,暑さが多少なりとも和らいだことに少しホッとした気分になりました.

 朝の公園のせみ時雨にしても,アブラゼミとミンミンゼミの二重唱にツクツクボウシの声が混じるようになったのは,ちょうどそのころからだったと思います.セミといえば,関西ではおなじみのクマゼミの“シャーシャーシャー”という鳴き声が最近,東京でも聞かれるようになりました.これまでは,関東地方でも私の実家があった小田原辺りがクマゼミのすむ北限だったようですが,近年の気候温暖化に伴い,生息域が北上しているそうです.一方,私が子どものころは,セミ取りに行くと一番たくさん捕まえることのできた,あの小さな“チッチッチ”と鳴くニイニイゼミですが,最近,都市部ではほとんど見掛けることがなくなってしまいました.その理由はよくはわかっていないらしいですが,一説によると,“幼虫が水分をたくさん含んだ地中に生息するため,森林が伐採されたり,地面の舗装が進んだりして,地面の乾燥化が進んでいることが影響しているのではないか”とか,“小型で飛翔力がほかのセミよりも格段に弱いため,緑地が分断されて緑地と緑地の間の距離が離れている都市部では,その間を移動できず,分布を広げることが困難になってしまったのではないか”などと考えられているようです.実は先日,私が勤務している信濃町の病院の敷地内でヒグラシの声を聴きびっくりいたしましたが,都心でも自然が回復してきていることの1つの現れと考え,ニイニイゼミの復活にも期待したいと思っています.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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