icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査59巻3号

2015年03月発行

文献概要

元外科医のつぶやき・3

思い出深い感染症患者

著者: 中川国利1

所属機関: 1宮城県赤十字血液センター

ページ範囲:P.291 - P.291

文献購入ページに移動
 抗菌薬や抗ウイルス薬などが次々と開発され,感染症はすでに過去の病気と思いがちであるが,いまだ感染症は時に牙をむく.外科勤務医としてかかわった患者のなかで,いつまでも記憶に残る感染症症例を紹介する.

 結核はかつて国民病といわれ,若者の死因の第1位であった.しかし,現在では罹患者は少なく,いわんや手術を要する例はごくまれである.だが,いまだ東南アジアでは結核がまん延し,来日した若者のなかにも重篤な結核が発症することがある.嫁のきての少ない東北地方の農村には,フィリピンなどからの来日花嫁が多い.その花嫁が,大量下血を主訴に緊急入院した.胸部写真では浸潤性陰影を,大腸内視鏡検査では出血を伴う多発性潰瘍を認めた.また喀痰や便からは結核菌を認め,しかも妊娠6カ月であった.そこで緊急に帝王切開を,引き続き結腸右半切除を施行した.両親や友達と離れ,言葉も通じない異国で,結核に罹患しながらの帝王切開と大腸切除,そして子育て.マスクを着けガラス窓越しにわが子を見守る母親に,エールを贈った.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?