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医学常識
輸血に必要な血液型抗原と抗体(1)
著者: 竹内直子1 保木本幸子1 大野公子1
所属機関: 1虎の門病院輸血部
ページ範囲:P.257 - P.260
文献購入ページに移動遺伝学とは,身体の特徴を受けつぐことを研究する学問である。この遣伝という現象は,1865年イギリスの牧師,Mendelによって初めて発見されたが,彼の植物についての実験は,1900年に再発見されるまで世界に知られずに過ぎた。再発見のあった年,すなわち,1900年よりこの植物,動物の実験を通じてこれら遺伝学の研究は非常に進み,染色体地図の作成まで発展した。そしてまた,人間の遺伝学の領域においても血液型が発見されることにより一層発展したのである。
血液型学や,免疫血液学をよりくわしく理解するためには,遺伝学の基礎的理解,ならびに細胞学の基礎的概念をつかむことが必要である。典型的な細胞は2つの異なった部分,すなわち,核と細胞質とからなっている。細胞の核の中で主要部分をなす,長い糸状の染色体(Chromosomes)といわれるものがある。この棒状の構造物は2つならんでおり,どの一対をとっても形,大きさが互いに似ていて,各々が独自の特異的な機能をもっている。以前は生命の単位は細胞だといわれたが,今日では,小さな粒子である遺伝子があり,これが遺伝を決定する最も小さい基礎的要素であるといわれる。これらは染色体の上で特別な位置をしめていて,この位置のことを遺伝子座(locus)という。身体の体細胞が分裂してできた2つあるいはそれ以上の娘細胞(daughtercells)はその両親(元の)細胞にそっくりなものができる。このように身体の成長とか,分化を支配している細胞分裂のメカニズムを有糸分裂(mitosis)といい,すべての体細胞は,受精した卵細胞から,有糸分裂の経過を経て発展して来たものである。これらの細胞の性質は二倍体(djploid)で元の両親細胞と同一数の細胞成分,遺伝子,染色体を含んでいる。
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