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文献詳細

雑誌文献

臨床検査6巻4号

1962年04月発行

文献概要

私の失敗

ロダンイオンを含む胃液の乳酸検出

著者: 小野次郎1

所属機関: 1日産化学工業王子工場診療所臨床検査室

ページ範囲:P.291 - P.291

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 大分古い話だが,胃液乳酸試験のBoas法について,黄色を呈すれば陽性だと教えられ,型どおり実施すると,幾らか赤味を帯びてはいるが黄色になった。分画採取した胃液全部についてやってみると,ほとんど陽性である。沈渣に桿菌酵母は認められない。しかし乳酸は乳酸醗酵によるのみでなく,血中より胃中にも排出されるといわれる。これだとばかり早速報告してしまった。後で類似反応物質ではないかと不安になり調べてみると,他の有機酸なども同様の反応を呈するとあるが,以前非行少年の喫煙の有無は,唾液を塩化鉄試薬で調べると聞いていたが,唾液中のロダンイオンはロダン鉄となって黄赤色〜赤色を呈し,昇コウを加えれば消える。また喫煙者は非喫煙者よりその量が多いといわれている。ロダンカリウム液でためしてみると,大体15mg/dl以下では赤味の比較的少ない黄赤色を呈し,昇コウを加えると消える(後に数例の空腹時胃液中のロダン量を測定したが,大体15mg/dl以下で,喫煙者に多い傾向があった)。そこで乳酸,ロダン乳酸混液についても同様に実施してみたが,昇コウは乳酸による呈色に影響せず,ロダンによる呈色のみ抑制することがわかった。これを胃液に応用して胃液滴下後昇コウを加えたら,やや白濁したが黄色は全く消えてしまった。
 結局,この胃液から乳酸は検出できず,定性検査に際しては特に類似反応に注意せねばならぬことを痛感させられた。喫煙者は非常に多いのであるから,以来私はこの昇コウ加法を用いている(1〜2%の昇コウ水溶液に10%塩化第2鉄液を滴下して希薄塩化鉄液を作り,これに胃液を滴下する)。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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