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増刊号 心電図が臨床につながる本。 Ⅲ章 波形からみた心電図[2] 不整脈関連Plus
P波の脱落や消失
著者: 中嶋一晶1 高月誠司1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部循環器内科
ページ範囲:P.1226 - P.1232
文献購入ページに移動本稿ではP波の脱落や消失について説明する.心房の興奮は洞結節から始まる.洞結節は自動能を有し,通常1分間に60〜100回でほぼ規則的に興奮し,それが心房全体に伝導し,房室結節を介して心室へと伝導する.P波は心房の興奮を示し,正常な心電図では規則的に出現し,P波の後には心室の興奮を示すQRS波が続く.P波は規則正しく出現すること,そしてQRS波の直前に出現していることが予測される.一方で,さまざまな状況でP波の脱落,消失を認めることがある.図1に具体例を示す.
本12誘導心電図においては,各QRS波の直前にくるはずのP波が確認できない.本症例は洞不全症候群であり,心房の興奮を認めず,左脚ブロック型波形の心室性補充調律のみが記録されている.このように,おのおののQRS波の直前にP波を確認できないものをP波の脱落や消失と考える.
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