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文献詳細

雑誌文献

臨床検査60巻13号

2016年12月発行

文献概要

心臓物語・9

心筋架橋って何?—心筋梗塞

著者: 島田達生12

所属機関: 1大分大学 2大分医学技術専門学校

ページ範囲:P.1506 - P.1506

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 ヒトは長時間走ることができる.マラソンは42.195kmで,100kmマラソンもある.しかし,動物は長く走れない.なぜか? 心臓の位置(方向)が違うからである.動脈血は心臓の収縮によって全身に運ばれるが,心臓だけが弛緩時に大動脈から冠状動脈に逆行性に流れる.心臓への血液循環は,立っているとき上(心底)から下(心尖)へ重力によって効果的に流れる.しかし,動物は四足であるため前から後ろに非効率的に流れる.したがって,ヒトでは寝ているとき,動物と同じ流れになり,危険が伴うことがある.ヒトの左冠状動脈は,左心室と右心室の境界を下行する前室間枝(前下行枝)と左房室間溝を走る回旋枝に分かれ,いずれも心外膜下を走行している.しかし,齧歯類,イヌ,サルの前下行枝は心筋層内を走っている.

 医学部での人体解剖実習のとき,一部の学生たちは冠状動脈の前室間枝(前下行枝)の異変に気付く.心外膜下を走っていた前下行枝が突然心筋層内に潜って再び心外膜下に出現することに遭遇するのである.まさに心筋が冠状動脈の上に橋を架けているように見える.これが心筋架橋(myocardial bridge:MB)である([1]).心筋架橋の出現頻度を調べた.100検体中,約50%近くにMBがみられ,長さは2〜50mmだった.かなり高い頻度である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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