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文献詳細

雑誌文献

臨床検査60巻13号

2016年12月発行

文献概要

寄生虫屋が語るよもやま話・12

バケツの中で住血吸虫が泳いでいます!—寄生虫恐怖症

著者: 太田伸生1

所属機関: 1東京医科歯科大学大学院・国際環境寄生虫病学分野

ページ範囲:P.1606 - P.1607

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 虫に関する妄想や異常感覚は精神疾患としばしば関係する.“虫が足もとを這い回る”というのはアルコール中毒に特徴的な愁訴であるが,“自分は寄生虫に感染している”という異常感覚も神経質な人にまれに現れるようである.私は精神科を専門としないが,職業柄,寄生虫に関する異常感覚の訴えの相談窓口となることはある.精神科領域では“寄生虫恐怖症(parasite phobia)”という疾患概念があることも勉強して知った.

 相談は1本の電話で始まる.相談者はこれまでの私の経験では全員中年女性であった.ほぼ全員既婚者である.低く落ち沈んだ声で“寄生虫がいるのですがどうしたらよいでしょうか?”と相談が始まる.“どうしました?”と問うと,“雑巾掛けをしていると,バケツの水に住血吸虫がいて,それが爪の中にビビビと入ってきたんです”と,かなり具体的である.たいがいは寄生虫の種類も特定してくる.私たち寄生虫屋にとっては突拍子もない話であるし,初学者が対応した場合は吹き出しかねないストーリーなのであるが,電話の主は真剣であることはすぐにわかる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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