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文献詳細

雑誌文献

臨床検査60巻4号

2016年04月発行

文献概要

元外科医のつぶやき・16

手術後初めての外来受診

著者: 中川国利1

所属機関: 1宮城県赤十字血液センター

ページ範囲:P.447 - P.447

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 腹腔鏡下前立腺切除術後41日目の8月12日,退院後,初めて外来を受診した.当然,病理結果ができていると思っていたが,未報告であった.教授は“早期胃癌と同じように連続切片を作製して詳細に検討するので,病理結果が遅れているのでしょう”と,さも当然のように語った.私が現役外科医時代には病理検査室に頻繁に顔を出し,遅くても10日以内には病理結果を得て,断端陽性の場合には追加切除や癌化学療法などを開始していたものである.

 そもそも私の場合,前立腺生検では病理学的に12検体のうち11検体で癌が検出され,MRI検査では被膜への浸潤を認める高リスク群cT3aであった.したがって,術中所見で取りきれたといっても,病理所見では切除断端陽性の可能性がある.断端陽性の場合は,「前立腺癌診療ガイドライン」では,数少ない推奨グレードBの“期待余命15年以上のpT3N0M0例に対しては,術後アジュバント放射線療法が推奨される”に合致する.また,“リンパ節転移陽性例(特に切除断端陽性例や精囊浸潤陽性例)に対しては,アンドロゲン遮断療法が推奨される”も,推奨グレードBである.したがって,病理結果を一日千秋の思いで待ち焦がれていた.私の心情を察した教授は,“たとえ病理学的に切除断端陽性でも,すぐには術後アジュバント療法は行いません.術後のPSA値の動きで再発を疑う場合に行います”と,焦る様子は全くなかった.さらに,“10月は海外出張もあるので,次回の外来は11月4日にしましょう”と,いたってのんびりした対応である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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