文献詳細
文献概要
寄生虫屋が語るよもやま話・6
検査技師さんの執念に脱帽—戦争イソスポーラ症
著者: 太田伸生1
所属機関: 1東京医科歯科大学大学院・国際環境寄生虫病学分野
ページ範囲:P.684 - P.685
文献購入ページに移動下痢便中にみられたのは戦争イソスポーラ(Isospora belli)であった.少々変わった名前の虫で,トキソプラズマなどアピコンプレックス門の腸管寄生原虫である.その名前の由来は,第一次世界大戦中に兵士の間で流行して戦力に無視できない影響があったことからだそうで,わざわざ“戦争”という名前が付いている.症状は一過性の下痢で,健常人の場合は自然治癒するが,免疫状態が低下している人では下痢症状が持続する日和見感染症である.正直に告白させていただくならば,私が戦争イソスポーラ症の検体に接したのはこれが最初であり,大変勉強になったケースであった.
掲載誌情報